31日の日本市場では円が上昇。日本銀行がこの日の金融政策決定会合で政策金利を据え置き、物価見通しを引き上げたことで利上げ期待が高まった。株式は日経平均株価が400円以上値上がりした。債券は先物が小幅高で終了。

日銀は31日、政策金利を0.5%程度に据え置いた。経済・物価情勢の展望(展望リポート)では2025年度の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)見通しを2.2%上昇から2.7%上昇に引き上げた。物価見通しのリスクは「おおむね上下にバランスしている」に上方修正した。

会見する植田和男日銀総裁

SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、物価見通しのリスクを中立的な表現にしたことが「次の利上げへの準備の一つ」だと指摘。市場はこれに反応したと言う。

午後3時半から植田和男総裁が記者会見。総裁は25年度物価見通しの上方修正だけで金融政策は左右されないと述べた。円は一時1ドル=149円台に乗せ、上げ幅を縮小した。債券先物は夜間取引で上げ幅を広げた。

為替

円は対ドルで上昇。日銀会合で利上げの姿勢が示され、利上げを織り込む動きが広がった。

みなと銀行の苅谷将吾ストラテジストは、展望リポートで日米関税交渉の妥結などを踏まえ「不確実性は極めて高く」との文言が修正されたことに着目。賃金と物価の相互作用への言及が加わり、インフレ見通しの上方修正が材料視されたと語った。

野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは電話取材で、27年度コア物価見通しが2%まで引き上げられたのはややサプライズだと指摘。会合を受けて10月利上げの期待値は上がったとし、円が買われたのはリーズナブルな動きだと述べた。

株式

株式は上昇。日経平均の上げ幅は400円を超えた。日銀が金融政策を据え置く半面、物価見通しを引き上げたことで銀行株に買いが入った。マイクロソフトなど前日に発表された米テクノロジー企業の堅調な決算も追い風となった。

日銀の金融政策について、T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャーは、物価面では日銀が利上げをするべきところに来ている一方、市場参加者は政治情勢を見る必要があると考えているとみられ、利上げの先行きを判断しにくいと述べた。

ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「市場の反応を見ると、日銀の発表は事前の想定よりややタカ派だったと受け止めたようだ」と話す。日銀の利上げ再開への思惑から、TOPIX銀行業指数は午後に上げ幅を拡大した。

 

債券

債券は日銀会合の結果を受けて先物が売られた後、買い戻された。

三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、先物がプラスに転換したことについて「今週前半に年金勢によるリバランスの買いが入っていたもようで、きょうも入っている可能性がある」と語る。日銀が公表した展望リポートは「物価見通しの上方修正など想定通りの内容で、9月会合もライブになる」と言う。

新発国債利回り(午後3時時点)

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:日高正裕、横山桃花.

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