(ブルームバーグ):日本株市場で日米通商合意を受けた自動車株の反発は続かないとの見方が早くも出ている。関税の悪影響が米国景気に表れ始め、日本の自動車メーカーも打撃を受けるとの警戒感が強いためだ。
トランプ米大統領は23日、日本製品に対する関税を当初の警告よりも低い15%にすると発表した。既に25%の関税が課されていた自動車メーカーにとっては実質的な負担軽減となり、東京市場では関連株が急騰。発表後の2日間でトヨタ自動車は2008年以来の大幅高となり、東証株価指数(TOPIX)は過去最高値を更新した。
ただ、ニッセイアセットマネジメントの伊藤琢チーフ・ポートフォリオ・マネジャーは、こうした反応を「一過性の動き」と冷ややかにみている。
伊藤氏をはじめ投資家の間では、関税の悪影響が米経済に及ぶことへの警戒感が強い。JPモルガン・チェースは、米経済成長率が今年前半の2%から後半は1%へ鈍化すると予想。ブルームバーグの集計によると、エコノミストの予想平均も第2四半期の2.1%成長から、第3四半期に0.8%、第4四半期に1.2%と減速する見通しとなっている。
三菱UFJアセットマネジメントの徳岡祥一チーフファンドマネジャー兼チーフエコノミストは、市場の焦点は今後、米景気が持ちこたえられるかどうかに移ると話す。今回の合意によって米国への輸出を巡る価格面での不透明感は解消したものの、数量面での不透明感は残ると指摘した。

トランプ関税への警戒感から、今年の外需・輸出関連株は内需株に大きく後れを取ってきた。年初来でゴールドマン・サックス証券の内需株バスケットが12%上昇する中、外需株バスケットは今週の反発でようやく年初来の下げを解消しつつある程度だ。
通商合意後も、多くの投資家は内需株から外需株へのシフトには懐疑的だ。ロベコ香港のポートフォリオマネジャー、ケルヴィン・リョン氏もその一人で、今後は米国景気の減速が見込まれると警戒している。
CLSA証券シンガポールのチーフエコノミスト、ライフ・エスケセン氏は、これまで関税発動前の駆け込み生産・消費で米国経済は持ちこたえてきたと分析。今後は「この部分が剝落する一方で、関税率が引き上げられたことのマイナスの影響が本格化してくる」との見方を示した。
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.