かつては日本の長期運転資金の担い手として、経営再建後は多くの外国人が利用する銀行として存在感を見せてきたSBI新生銀行の新規株式公開(IPO)は、知名度の高さと多くの金融サービスを提供するSBIホールディングスとの相乗効果(シナジー)期待で投資家の需要を集めそうだ。市場では時価総額が最大で1兆5000億円に上るとの見方も出ている。

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SBI新生銀は11日、東京証券取引所に上場申請を行ったと発表。2023年9月には旧日本長期信用銀行の時代に投入された約3500億円の公的資金の返済に向け、経営の自由度を高める狙いから非上場化した。公的資金は月内にも完済する見込みだ。

再上場に向け、投資家からはSBIグループに加わったことによるシナジーに期待する声が上がっている。三菱UFJアセットマネジメントの友利啓明エグゼクティブファンドマネジャーは、証券や保険事業などからSBI新生銀への送客も業績の追い風になり、新たな中期経営計画の財務目標を基にした試算では時価総額が1兆-1兆5000億円に達する可能性があるとみている。

こうした評価がつけば、3月に上場したJX金属に続く超大型案件となりそうだ。国内IPO市場は年初から総額で約5510億円の資金調達が行われた。約4390億円の規模に膨らんだJX金属が多くを占めるが、総額は前年同期の2200億円程度を大きく上回っている。

GCIアセット・マネジメントの池田隆政シニア・ポートフォリオ・マネジャーも、SBIホールディングスと旧新生銀行のシナジーを踏まえると、同案件は成功するだろうと予想。地銀の合併が続く中、SBI新生銀は「コアな位置」にあることも期待感を生むと指摘した。

バブル期の過剰融資で経営破綻した旧長銀を米投資会社などが買収し、00年に誕生したのが旧新生銀だ。国内の大手金融機関では外資による初の買収事例となり、英語対応のインターネットバンキングや大手コンビニエンスストア系列のセブン銀行との提携など画期的なサービスを展開した。21年にSBIHDに親会社が代わり、22年にSBI新生銀に社名を変更した。

銀行の収益を左右する預金残高は増えている。SBIHDの資料によると、SBI新生銀の総預金残高は25年3月末時点で14兆6000億円と前年から3割ほど増加し、少なくとも21年以降では最大規模。外部環境を見ると、銀行セクターには金利上昇の好影響も期待でき、銀行が顧客から預かった預金を貸し出しなどで運用する際の収益増が見込まれる。

ただし、リスクもある。物価変動を加味した実質賃金は5月に20カ月ぶりの大きな減少率となり、好調な経済の勢いが維持できるかどうか不透明だ。米国のトランプ政権による関税政策が国内経済に与える影響も見通しづらく、業績が景気と連動しやすい銀行には懸念すべき点があるのも事実だ。

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、知名度や足元の金利環境はSBI新生銀のIPOにプラスだとし、「それなりに需要が集まるのではないか」と予想。一方、中長期では日本の景気次第だとし、賃上げの好循環がどこまで続くかが鍵になるとみる。

--取材協力:鈴木英樹.

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