欧州の高級ブランド株にとって、この決算シーズンは明暗の分かれ目が一層鮮明になる局面となりそうだ。

業界はトレンチコートの英バーバリー・グループの好決算で幸先の良いスタートを切った。カルティエを傘下に持つリシュモンも市場予想を上回る売上高を発表した。

だが、今後に決算発表を控えるLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン、ケリング、サルヴァトーレ・フェラガモといった銘柄については、楽観視できないとの見方が広がっている。

これらの企業の売上高が、既に弱気に傾いている市場予想を下回るようなら、年初来の株価下落がさらに加速する可能性がある。これらの銘柄は今年に入って最大で1750億ユーロ(約30兆円)の時価総額を失っている。

格差は、中国の需要低迷、ブランド評価の差、ユーロ高・ドル安、高バリュエーションといった複雑な要因が、各社に異なる影響を及ぼすことによって拡大してきた。

今回の決算シーズンは、どの企業が平均を上回り、どこが出遅れるのかを見極める上で極めて重要だ。アナリストは、企業ごとの増収率に大きなばらつきが出ると予想している。

DWSのシニアポートフォリオマネジャー、シュテファンギュンター・バウクネヒト氏は「このセクターに関しては、一律に追い風が吹くわけではない」と指摘する。

「カテゴリーおよびカテゴリー内でブランドがどう見られているかに大きく左右される」と解説した。

 

セクター内の明暗を象徴する例の一つが、フランスの2大高級ブランド、LVMHとエルメス・インターナショナルの対比だ。

アナリスト予想によると、LVMHの主力である「ファッション&レザーグッズ」部門の4-6月(第2四半期)売上高は、前年同期比で7.8%減少する見通し。

一方、最上級品の販売で成功を収めている典型例とされるエルメスは、同じレザーグッズ部門で12%の増収が見込まれている。

ルイ・ヴィトンやティファニーを傘下に持つLVMHの株価は、過去2年で約半分に下落。欧州最大の時価総額銘柄の座を失った。

一方、エルメス株は業界全体が調整局面にあるにもかかわらず堅調に推移。2020年末以降に160%上昇した後、今年は横ばい圏に踏みとどまっており、ゴールドマン・サックス・グループが組成する高級ブランド株バスケットが7%下落している中でも持ちこたえている。

 

ブラックロック・ファンダメンタル・エクイティーズの欧州・中東・アフリカ(EMEA)最高投資責任者(CIO)、ヘレン・ジュエル氏は、「現在の経済環境では、価格決定力が極めて重要だ」と指摘する。

「投資家にとって難しかったのは、ブランド力があると思っていた企業が、実はそうではなかったというケースが幾つかあったことだ」とジュエル氏は述べ、セクターの売りが一巡した後には買い場が訪れる可能性もあるが、銘柄選別が重要だと強調した。

業界全体で見ると、現在と21-23年の好況期とのギャップは非常に大きい。当時は新型コロナウイルス流行後の消費ブームを追い風に、欧州の高級ブランド株を投資家がこぞって買いあさる展開が続いていた。

しかし現在は、中国経済の減速が高額なバッグや時計への需要に影を落とす中で、投資家は、消費者を引き付け続けられるブランドの株は買い、そうでないものは売るという、より選別的な姿勢を強めている。

 

また、高級ブランド株の一部の銘柄は今年大きく下落したが、一部投資家は依然として全体的にバリュエーションが割高だとみている。

ブルームバーグのデータによれば、高級ブランド業界全体の予想株価収益率(PER)は平均27倍で、市場全体と比べて約85%のプレミアムとなっている。

 

ソシエテ・ジェネラルの欧州株式戦略責任者、ロラン・カロヤン氏は「このセクターは、関税の影響を全面的に受け、ドル安の影響ももろにかぶる」と指摘。

「かなり厳しい状況になると思われるため、引き続きアンダーウエートを維持している」と語った。

原題:Luxury’s Gulf Between Winning and Losing Stocks Is Widening (1)(抜粋)

--取材協力:Angelina Rascouet、Isolde MacDonogh.

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