米アクティビストファンドのサファイアテラ・キャピタルは、大手アパレルメーカーの三陽商会の経営陣に対し、長期的な戦略として、資本提携先の三井物産への身売りを選択肢として提案する内容の書簡を送付した。

サファイアテラ最高投資責任者(CIO)の細水政和氏は、ブルームバーグの取材に対し、三陽商は「有力ブランド買収や新ブランド立ち上げなど単独で成長を目指すには企業規模が小さい」と指摘。資金力のある三井物の傘下に入ることで、より大胆な投資が可能になると述べた。三井物は三陽商株の8.74%を持つ大株主。

細水氏はRMBキャピタル(現キュリキャピタル)在籍時の2017年に三陽商への投資を開始。24年の独立時に三陽商株も保有する私募ファンドの運営を引き継ぎ、株式を買い増していた。業績不振だった20年にも身売りの検討を迫ったが、売却先候補の具体名には言及していなかった。

身売り提案に関するブルームバーグの報道を受け、三陽商の株価は23日の取引で、一時前日比12%高の3025円と23年10月10日以来約1年9カ月半ぶりの日中上昇率を記録した。終値は11%高の2979円だった。

サファイアテラは同日午後、関東財務局に大量保有報告書を提出し、7月15日現在の持ち株比率が約5.1%になったと明らかにした。保有目的は「純投資」としている。

 

今回の書簡では、三井物の完全子会社になって積極的な拡大路線を取るか、上場を維持するなら既存ブランドに注力し小規模で資本効率の高い企業を目指すべきだとする2つの選択肢を提案。前向きに検討するよう経営陣に求めている。

また、三陽商の適正株価は少なくとも4400円以上だと主張。3000円前後にとどまっているのは、構造改革の一環として不動産や有価証券の売却を進めた結果、現預金が積み上がって資本効率が悪化しているのが原因だと指摘。速やかに40億円の自社株買いを実行し、さらに3年間で120億円を取得するよう求めた。

三陽商の広報担当者はコメントを控えるとした。三井物の担当者は報道は承知しているとした上で、個別案件の有無や内容については答えられないとしている。

細水氏は、三陽商の経営陣が提案内容を真剣に検討せずに放置した場合、引き続き対話を続けつつ、来年の定時株主総会で株主提案を提出することなども検討するとしている。

日本では東京証券取引所による市場改革が進む流れの中で、アクティビストによる日本企業への圧力が強まりつつある。三井住友信託銀行によると、25年6月の株主総会では、株主提案を受けた114社のうち、提案者がアクティビストを含む機関投資家だったケースは51社と過去最高を記録した。

(三井物産のコメントを追加して更新します)

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