23日の日本株は急騰した。トランプ米大統領が日本との関税合意を発表し、自動車など輸出関連を中心に買いが膨らんだ。石破茂首相の退陣報道を受けて新政権への期待も高まり、主要株価指数は3%を超える上昇となった。債券は大幅下落し、円相場も売られた。

トランプ大統領は22日、日本からの輸入品に15%の関税を賦課すると明らかにした。日米合意を受け、市場の関心は石破首相の進退に移っている。読売新聞は、石破首相が退陣する意向を固め、月内にも表明する方向と報じた。同首相は23日午後、退陣報道について「そのような発言をしたことは一度もない」と否定した。

アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、株価の上値を抑えていた参院選と関税の行方が明らかになり、「イベントリスクに対する懸念が後退した」と指摘した。

 

債券市場では日米合意を受けて日本銀行の利上げがしやすくなるとの見方から売りが強まり、長期金利は約17年ぶりの高水準を付けた。首相退陣観測で財政拡大懸念が強まる中、この日行われた40年債入札は低調な結果に終わった。

株式

東京株式市場では全面高の展開となり、TOPIXと日経平均の上昇率は、トランプ大統領による上乗せ関税の一時停止表明を受けて株価が急騰した4月10日以来の大きさとなった。

NHKが自動車関税が15%になったと報じ、自動車株が急騰。トヨタ自動車の株価は一時16%高と約38年ぶりの日中上昇率を記録した。電機や機械、銀行、商社も買われ、対米設備投資関連でダイフクやファナックも高い。

三菱UFJアセットマネジメントの石金淳エグゼクティブファンドマネジャーは「特に自動車関税の引き下げは日本株にとってポジティブサプライズ」で、自動車株は悪材料出尽くしで今後上昇していくと予想。新政権への期待を背景に「株式市場には早期の首相退陣が好感される」とも指摘した。

債券

債券相場は大幅下落。日米関税合意を受けた日銀利上げ観測のほか、石破首相の退陣が早まるとの見方も売りを加速させた。財務省が実施した40年国債入札は、投資家需要の強弱を反映する応札倍率が2011年以来の低水準となった。

長期金利の指標となる新発10年債利回りは一時10bp上昇し、1.6%と08年以来の高水準を付けた。40年債利回りは入札後に一時8.5bp上昇。市場の政策金利見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)が織り込む日銀の年内利上げ確率は8割を超す。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、15%の関税は日銀の前回展望リポートにおける見通しの前提より低いため、7月展望リポートで成長率見通しを上方修正しやすくなり、早期利上げ観測が高まる可能性から中長期金利の上昇要因になると指摘。石破首相の退陣が早まれば「財政拡張リスクが高まるので、超長期金利の上昇要因になる」とも述べた。

日銀の内田真一副総裁は23日、高知県金融経済懇談会で、各国の関税政策や内外経済への影響を巡る不確実性は極めて高いとしつつ、経済・物価のメインシナリオが実現していけば利上げを継続するとの見解を改めて表明した。

40年国債入札の応札倍率は2.13倍で、過去12カ月平均の2.48倍や前回の2.21倍を下回った。最高落札利回り(複利ベース)は3.375%と07年の入札開始以降で過去最高となった。岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは「石破首相の退任報道や日米通商合意などヘッドラインが出て市場が不安定な状況になっていたため、取り組みづらさが増して投資家の様子見姿勢が強まった」とみていた。

新発国債利回り(午後3時時点)

為替

円相場は1ドル=146円台で売り買いが交錯していたが、石破首相の退陣を巡る報道後は売り優勢に転じ、一時147円台前半まで下落した。

みなと銀行の苅谷将吾ストラテジストは、次期首相として意識される「高市氏はアベノミクスに金融緩和と、どうしても円安圧力がかかりやすい」と指摘。一方、日米通商合意で日銀が追加利上げをしやすくなった面もあるとし、「次の首相はまだ不透明で円をどんどん売るのは難しい」との見方も示した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

(第2段落に石破首相の退陣報道に関する発言を追加します)

--取材協力:横山桃花.

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