ウォラー米連邦準備制度理事会(FRB)理事は17日、米金融当局が今月29、30両日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、政策金利を0.25ポイント引き下げるべきだとの考えを示した。軟化の兆候が見られる労働市場を支えるためだとした。

ウォラー氏は「インフレ率が目標に近づき、インフレの上振れリスクも限定的であることから、労働市場が悪化するまで利下げを待つべきではない」と指摘。「私は今から2週間後にFOMCが政策金利を25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げるのが妥当だと考える」とコメントした。

ウォラーFRB理事

ニューヨークで開催されたマネー・マーケティアーズ主催のイベント向け講演テキストでこうした見解を示したもので、労働市場は引き続き堅調だとする他の金融当局者の大多数と一線を画す形となった。

ウォラー氏は「ソフトデータとハードデータの両方を見渡すと、労働市場が瀬戸際にあるという印象を受ける」と語った。

いずれもトランプ政権1期目にFRB理事に指名されたウォラー氏とボウマン副議長(銀行監督担当)はかねて、今月のFOMC会合で現行4.25-4.5%のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジの引き下げを検討することにオープンな姿勢を表明していた。

ウォラー氏は、来年5月に任期満了を迎えるパウエルFRB議長の後任候補の1人と目されている。トランプ氏は、利下げを望む人物を次期FRB議長に指名する意向を表明している。

ウォラー氏は、FRB議長ポストに関してトランプ政権当局者と話をしたことはないと明らかにした。

ウォラー氏はこれまで、トランプ政権の関税措置がインフレに与える影響は一時的なものにとどまるとの見解を示し、他の当局者と一線を画していたが、17日にもその見方を繰り返した。

「金融政策は関税の影響を見越して対応すべきで、基調的なインフレに重点を置くべきだ。それはFOMCの2%目標に近い水準にあるように見受けられる」と述べた。

今週発表された6月の米消費者物価指数(CPI)のうち、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は5カ月連続で予想を下回った。ただ一部の物品では、トランプ大統領による積極的な関税措置の影響で価格が押し上げられている様子が顕在化している。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁やクーグラーFRB理事は、米関税措置が今後インフレ率の押し上げを招く可能性があるとして懸念を表明。利下げを急ぐのではなく、静観の姿勢を維持すべきだとの考えを示している。

雇用巡るリスク

ウォラー氏は、インフレ期待は安定しており、賃金の伸びも加速していないことから、インフレが長期化するとの懸念は和らいでいると述べた。さらに、労働市場が弱含むリスクは「一段と大きく、十分」にあるとして、利下げを正当化するとの見解を示した。

「経済は引き続き成長しているが、勢いは大幅に鈍化しており、最大限の雇用についてのFOMCの責務に対するリスクは高まっている」と論評。米経済は2025年上期(1-6月)に約1%のペースで成長した後、年内は「軟調な状態が続く」との見通しを示した。

今月3日に発表された6月の米雇用統計では、失業率がわずかに低下した一方で、民間部門の雇用の伸びは大幅に減速し、賃金の伸びも鈍化したことが示された。

トランプ政権による移民対策推進は、外国生まれの労働力人口の顕著な減少と相まって、労働市場の分析を困難なものにしている。

米金利先物市場の動向を踏まえると、投資家は今月のFOMC会合での金利据え置きを見込んでおり、9月16、17両日の会合での利下げ確率は50%をやや上回ると想定している。

講演後の質疑応答でウォラー氏は、今回自身が主張している利下げ以外の追加利下げの時期については、今後の経済指標次第で判断すべきだと説明した。

「利下げを開始したら、その後の会合ごとに立て続けに実施する必要はない」と述べるとともに、「私にとって重要なのは利下げを始めることだ。状況が本格的に悪化する前に先手を打つべきだ。労働市場が悪化してからでは手遅れだ。すでに終わっている」と論じた。

このほかウォラー氏は、首都ワシントンのFRB本部の改修工事についての質問にも答えた。このプロジェクトの予算超過を受けて、共和党がパウエル議長に対する批判の材料にしている。

「この件には多くの注目が集まっている」とした上で、「私がこれまで耳にしてきた建設プロジェクトの中でもこうしたことはよくある。擁護するつもりはないが珍しいことではない。17年に予算を策定した当時よりも、はるかに高いインフレに見舞われた。それが明らかに影響している要因だ」とコメントした。

FRBは今月の会合で0.25ポイントの利下げを実施すべきだとウォラー理事が発言

原題:Waller Says Fed Should Cut Rates Now With Labor Market on Edge(抜粋)

(米労働市場を巡る現状の説明を追加して更新します)

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