銅の対米輸出を急ぐトレーダーは輸送期間を短縮しようと、貨物の経由地をハワイやプエルトリコに変更する動きを見せている。銅に50%の関税を課すというトランプ米大統領の方針を受け、利幅の大きい裁定取引の機会が失われる恐れがあるためだ。こうした取引は数カ月前から業界の潮流だった。

トランプ氏の発表を受け、ニューヨークの銅先物相場は国際的な指標価格を約25%上回る水準に急上昇した。関税発効前に銅を米国に持ち込むことができれば、トレーダーはさらに大きな利益を確保できる反面、間に合わなければ多大な損失を被るリスクがある。

銅市場は、トランプ氏が2月、銅への関税賦課につながる可能性がある調査を商務省に指示する大統領令に署名して以来、劇的な変化をたどってきたが、今回の発表でヤマ場を迎えたとみられる。米国の銅価格が急伸したことで、米国向け供給を急ぐ動きが業界全体に広がり、国内在庫は急増。一方、世界各地で供給逼迫(ひっぱく)が深刻化した。

市場に詳しい関係者によれば、関税発表を警戒する動きもあってここ数週間は出荷規模が縮小傾向にあった。それでも、大量の銅が米国の港に向かっている状況に変わりはないという。

8日の発表を受け、トレーダーは混乱の中、疲弊しながら夜通し対応に追われた。米国に既に向かっている貨物をどうするか、追加の出荷を急ぐべきかといった判断を迫られた。関税の導入自体は織り込み済みだったが、50%という関税率は市場の大方の想定を上回った。

トランプ氏は9日夜、SNSへの投稿で、銅輸入に対し8月1日から関税を課すと明らかにした。

市場関係者によれば、駆け込みで銅を確保しようとする一部のトレーダーは、ロンドン金属取引所(LME)の相場に対して1トン当たり約400ドル(約5万8000円)のプレミアムを提示している。中国向けだった貨物の行き先を米国に変更しようとする動きもあるという。関係者は商業的に微妙な情報だとして匿名で語った。

銅貨物の買い手の間では、ニューヨーク商品取引所(COMEX)の先物契約で引き渡し可能なブランドの銅について、より高値を支払う動きが強まっている。こうしたブランドであれば、米国到着後に販売先が見つからなかった場合でも、最終手段としてCOMEXで売却できる可能性がある。市況は不安定だが供給が豊富な足元の市場では、COMEXでの売却が有利な選択肢となり得る。

アジアから、米国内の主要な在庫拠点であるニューオーリンズまでの輸送には通常、1カ月以上かかる。ラトニック商務長官は8月1日までに関税が導入されると表明しており、銅を今後出荷するトレーダーはリスクを抱えることになる。

ただ、ハワイまでの輸送期間は約10日と短い。事情に詳しい関係者によれば、ハワイに向けた出荷が既に1件完了している。

複数のトレーダーによれば、南米の生産者にとっては、米国の関税区域内に含まれるプエルトリコも魅力的な輸送先となっている。

原題:Copper Traders Rush Metal to Hawaii to Capture Mega Tariff Trade(抜粋)

(トランプ氏のSNS投稿を追加して更新します)

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