「どうすれば金持ちになれるのか」
かつてシティバンクでFXトレーダーとして名をとどろかせ、億万長者としてYouTuberに転身したギャリー・スティーヴンソン氏は、この普遍的な問いに衝撃的な答えを提示します。
最近彼の自宅を訪れた日本人の友人も、同じ質問を投げかけたといいます。その問いに、スティーヴンソン氏は「ほかの質問にしてくれないか」と心の中で思ったそうです。
なぜなら、現代社会において、若者が自らの力で富を築くことは、極めて困難な道だと知っているからです。
この残酷な現実を前に、スティーヴンソン氏はこう断言しています。

「現代社会で金持ちになるための、最も効果的で成功する戦略はただ一つ。それは、金持ちの親を持つことです」
人々が聞きたい答えではないと理解しつつも、これが現代社会の偽らざる真実だと、彼は語ります。
自身の半生を描いた著書『トレーディング・ゲーム』を通して、スティーヴンソン氏は社会の歪みをあぶりだしました。
イギリスの貧しい家庭から超エリート大学を経て、シティバンクで莫大な富を築いたスティーヴンソン氏は、まさに「例外中の例外」です。
彼が目の当たりにしてきたロンドンや東京のトレーディングフロアは、ほぼ全員が裕福な家庭の出身者で占められていました。
資本主義はオワコン、努力しても金持ちになれない
30~40年前の親世代であれば、貧しい家庭に生まれても、懸命な努力によって資産を築く道があったかもしれません。
しかし、現代の若者を取り巻く環境はあまりに厳しいと、スティーヴンソン氏は指摘します。賃金は伸び悩み、一方で株や不動産などの資産価格は、一般人の感覚からかけ離れた水準にまで高騰しました。

彼が「資本主義はもう終わりました」と語る背景には、大きく二つの理由があります。
第一に、裕福な家庭の出身でなければ「良い仕事」に就くこと自体が、ほぼ不可能になっているという現実があります。
スティーヴンソン氏は、名門ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスをトップクラスの成績で卒業しました。
それでも、シティバンクの職を得る決め手となったのは、あるカードゲームでの「いんちき」だったと赤裸々に語ります。彼の同僚たちは、親のコネや、幼少期から費用をかけて経験した輝かしい「課外活動」で彩られた履歴書を携えていました。
新聞配達の経験しかなかった彼にとって、それは「最初からいかさまのゲーム」のように感じられたそうです。
第二の理由は、言うまでもなく「資産価格」の高騰です。
親世代は、真面目に働いて貯蓄すれば家が買えました。しかし、現代では資産価格の上昇に賃金がまったく追いついていません。
努力が正当に報われたかつての資本主義は姿を消し、まるでヨーロッパの貴族社会のように「誰の子供であるか」が人生を決定づける社会へと変わりつつある、とスティーヴンソン氏は警鐘を鳴らします。