(ブルームバーグ):暗号資産(仮想通貨)ビットコインは今年、年間ベースでは史上4回目となる下落で1年を終えそうだ。大きなスキャンダルや業界の混乱と重ならずに下落するのは、今回が初めてとなる。
ビットコイン相場は16日には持ち直しているものの、前日には急速な売りが広がり、約2週間ぶりに8万6000ドルを下回った。
過去3回の年間ベースでの下落に比べれば、今回の調整ははるかに穏やかだが、起きている状況は大きく異なる。2022年の大幅下落以降、仮想通貨市場への機関投資家の参入は広がり、規制も成熟してきた。業界は、トランプ米大統領という最大の後ろ盾を手にしたとの見方もある。
それだけに、10月初めにビットコインが12万6000ドル超の過去最高値を付けて以降の急落は、強気派を困惑させている。取引量は低迷し、ビットコインを裏付けとする上場投資信託(ETF)からは資金流出が続き、デリバティブ市場でも反発を狙う意欲が乏しい。市場で圧倒的存在感を持つマイケル・セイラー氏率いるストラテジーによる巨額の買いも、相場の流れを大きく変えるには至っていない。
「これだけ多くの好材料があるにもかかわらず、市場の反応が乏しいことに投資家は驚いている」と、ヘッジファンドのアポロ・クリプトでポートフォリオマネジャーを務めるプラティク・カラ氏は述べた。
弱気相場の影響で、ビットコインは株式との連動性を失っている。S&P500種株価指数は今月に入って過去最高値を更新し、年初来で約16%高となっている。ビットコインと連動する傾向が強いテクノロジー株は、これを上回る上昇率を示している。

ビットコインが過去に経験した3度の年間下落局面はいずれも、市場の信頼を一時的にせよ揺るがす出来事が背景にあった。
2014年にはビットコイン取引所マウントゴックスのハッキングと破綻が起き、草創期の暗号資産インフラの脆さが露呈した。その4年後には当局の取り締まりを受けて新規仮想通貨公開(ICO)バブルが崩壊。2022年にはサム・バンクマンフリード氏のFTXなど大手が相次ぎ破綻し、当時のバイデン米政権による広範な規制強化につながった。

10月の高値までは、ビットコインの上昇基調に陰りは見えなかった。トランプ大統領は暗号資産を国家的優先事項と位置づけ、米議会はステーブルコインに関する画期的な法案を可決。ビットコインETFには多額の資金が流入していた。
しかし、その裏では、過度なレバレッジを中心に脆弱性が蓄積していた。10月10日には190億ドル規模のレバレッジ取引が一斉に清算され、市場の脆さが露呈した。
複数の指標は、少なくとも足元では投資家が様子見姿勢を強めていることを示している。
10月10日以降、米国上場の現物ビットコインETFからは52億ドル超が流出した。データ提供会社カイコによれば、大口取引を大きな価格変動なく吸収する力を示す市場の厚み(マーケットデプス)は、今年の高水準から約30%低下している。
原題:Bitcoin Fatigue Sets In as Token Heads for Fourth Annual Loss(抜粋)
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