(ブルームバーグ):ワイルズ米大統領首席補佐官は米誌ヴァニティ・フェアとのインタビューで、電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)を「公然たる」薬物常用者と表現。マスク氏以外にも言及し、トランプ政権の内情について率直な批判を展開した。
ワイルズ氏はバンス副大統領を「陰謀論者」、ボート行政管理予算局(OMB)局長を「熱心な右翼狂信者」と呼んだほか、エプスタイン文書の取り扱いをめぐってボンディ司法長官を厳しく批判した。エプスタイン氏は未成年の性的人身売買などで起訴され、2019年に収監先で死亡した。
ホワイトハウスは直ちに反論に動いた。ワイルズ氏本人はソーシャルメディアへの投稿で「重要な文脈が無視された」とし、「意図的な攻撃記事だ」と非難した。
レビット報道官はワイルズ氏への支持を表明し、「スージー(ワイルズ氏)ほどトランプ大統領への忠誠が強い顧問はいない」とXに投稿した。
「トランプ政権は一丸となってワイルズ氏の安定したリーダーシップに感謝し、全面的に支持している」とレビット氏は続けた。
インタビューは1年かけて複数回行われたもので、ワイルズ氏はマスク氏について「完全に単独行動を取る人だ」と述べ、「ついて行くことが同氏と向き合う上での試練だ」と語った。
ヒトラーやスターリン、毛沢東の時代に数百万人が死亡したのは公共部門の労働者に責任があると、マスク氏がXに投稿したことについて、ワイルズ氏は見解を求められ「彼はその時(ケタミンを)少量使用していたのだと思う」と回答した。ただしマスク氏の薬物摂取について、直接の認識はないと話した。
マスク氏とテスラの広報担当者にコメントを求めたが、現時点で返答はない。マスク氏のケタミン摂取については米紙ニューヨーク・タイムズが今年報じている。
マスク氏は今年、政府効率化省(DOGE)を率いて連邦政府機関の人員と役割を大幅に削減し、その衝撃はワシントン内外に広がった。
トランプ大統領が守りたかったプログラムをマスク氏が閉鎖した際、ワイルズ氏は「仰天し」、マスク氏に抗議したという。
「やるならすぐやる、というのがイーロンのやり方だ」とワイルズ氏はヴァニティ・フェアに語った。「そうした態度ではお皿が何枚割られるか分からない。まともな考え方の人で、米国際開発局(USAID)の閉鎖に賛成する人はいなかった」と述べた。
マスク氏はトランプ政権を離れ、自身の政党を立ち上げると示唆し、トランプ氏との関係はいったん悪化した。しかしそれも現在では修復しつつあるようだ。アクシオスはこの日、2026年の中間選挙に向けマスク氏が共和党の議会キャンペーンに資金提供を開始したと、事情に詳しい関係者の話として報じた。マスク氏はさらに寄付を増やす意向だという。
エプスタイン文書
ワイルズ氏はヴァニティ・フェアとのインタビューで、エプスタイン文書の扱いについてボンディ司法長官を批判した。ボンディ長官は2月、「エプスタイン文書:フェーズ1」との表題が付いたバインダーを保守系インフルエンサーのグループに配布し、トランプ大統領の支持者たちを沸かせた。
しかしボンディ氏が公開したファイルには既出の情報しか含まれていなかった。同氏はその後FOXニュースに対し「エプスタイン氏の顧客リストは私の机の上にある」と発言し、さらに論争を呼んだ。だが司法省と連邦捜査局(FBI)は転じて、エプスタイン氏が顧客リストを保持していた事実はなく、これ以上文書を公開する予定はないと述べた。この対応はトランプ支持層の一部からの反発を招いた。
ワイルズ氏はヴァニティ・フェアとのインタビューで「最初に彼女が渡したのは『中身のない情報の詰まったバインダー』だった。その後に証人リスト、もしくは顧客リストが自分の机の上にあるとも発言した。顧客リストなんてものは存在しないし、彼女の机の上にもなかった」と語った。
さらに自身もエプスタイン文書を読んでおり、トランプ氏の名前はそこに言及されていたと発言。「何らかのひどい行動をしていたとは書かれていない」とこのインタビューで述べた。
トランプ大統領は11月、司法省にエプスタイン文書の公開を命じる法案に署名した。
バンス副大統領
かつてトランプ氏を批判していたが、同氏のポピュリスト路線を受け入れて副大統領にまで上り詰めたバンス氏についても、ワイルズは率直に語った。
「上院選に出馬した時に転向したと思う。その転向はどちらかというと政治的なものだった」とワイルズ氏は語った。
同氏はまた、トランプ氏が敵視するニューヨーク州のジェームズ司法長官とコミー元FBI局長が起訴されたのは、政治的な報復だと認めた。ワイルズ氏はこうした「仕返し」は就任後最初の3カ月に限定するよう、大統領に要請したという。
原題:White House Chief Calls Musk Drug User, VP ‘Conspiracy Theorist’(抜粋)
--取材協力:Rick Clough.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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