シニア世代が今後優先したい費用
(1)最も優先したい費用は「医療・介護費」と「食費」
このようななか、シニア世代は家計に関し、どのような費用を優先し、どのような費用を節約したいと考えているのか。今後のお金の使い方について「優先的にお金を使いたいと考えているもの」「節約したいと考えているもの」をたずねた結果をみると、シニア世代が最も優先的にお金を使いたいと考えている費用は「自分や配偶者あるいはパートナーの医療・介護の費用」となっている。また、「食費」についても優先したいと答えた人が多く、これらの2項目が、シニア世代が最優先でお金を使いたい、あるいは使う必要があると考える人が多い費用だと考えられる。
ただし、「食費」に関しては、経済的な暮らし向きにより優先的にお金を使いたいか、節約したいかの位置づけが大きく異なっている。図表1で回答者全体の約半数を占めて最も多かった「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」人と「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」人では、「優先的にお金を使いたい」割合が「節約したい」割合を上回っている。これに対して、「家計にゆとりがなく、多少心配である」「家計が苦しく非常に心配である」と答えたシニア世代では、「優先的にお金を使いたい」割合を「節約したい」割合が上回っている。家計や暮らし向きが比較的安定している人のなかには、食品の品質や利便性などを重視して、食費にお金を優先して使いたいという人もいるのだろう。他方、家計にゆとりがない人では、家計のバランスをとるためにやむをえず食費を削らざるを得ないと考える人が多いのではないか。
(2)できれば優先したい「子や孫のための支出」
なお、「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」に関しても、優先してお金を使いたい人が比較的多い一方、節約したい人が少ない。実際に子や孫にかかわるどのような費用をシニア世代がどの程度負担しているのかはケースにより異なるが、学費をはじめ、子や孫の将来に役立つ費用や、未成年の子や孫へのこづかいを積極的に節約したいと考える親・祖父母は少ないと思われる。子世代の経済状況やライフステージなどにもよるが、このなかには、学費など子や孫の将来につながる費用を優先しながら子世代の生活費を負担している親、子や孫の楽しみや幸せを願って、こづかい等を与えたいと考える祖父母等もいるだろう。
子や孫がいる回答者のうち、「子や孫の生活費」を負担している人の割合は、経済的な暮らし向きについての考えとして「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」人では23%であった一方、「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」「家計にゆとりがなく、多少心配である」「家計が苦しく、非常に心配である」と答えた人ではそれぞれ30%、34%、36%という結果もある。家計にゆとりがないなかで、子や孫の生活費を負担しているシニア世代もいると考えられる。
家計のゆとりが失われている人においても、家計の見通しを立てることで、将来に向けて安心感をもてるケースもあると考えられる。「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を節約しなくてもよいように、家計の運営方法について家族で話し合ったり、見通し等を専門家に相談してみることで、家計運営を前向きに考えていけるようになるのではないか。