家計の現状に対するシニア世代の捉え方

物価上昇にかかわる報道にふれる機会が増えているが、シニア世代もその例外ではないだろう。シニア世代は収入をともなう仕事からのリタイア、公的年金の受給開始などによる経済状況の変化を経験する人が多い。また、シニア世代のなかには資産形成を行ってきた期間が長く、貯蓄などの資産や公的年金など、就業による収入以外の収入源をもつ人もいるだろう。

しかしながら、経済環境の変化等を背景に、家計の現状に不安を感じたり、今後の資金計画などを再考中の人もいるのではないか。また、自身が受給する公的年金の見通しや仕組み、自助による老後の資産形成の重要性などについて学ぶ機会がなかった人、さまざまな理由で計画的な資産形成が行えなかった人などもいるだろう。本稿ではこのようなシニア世代が、今後の家計運営に関してどのような感覚をもち、それらへの対処においてどのような留意が必要かについて考察する。

内閣府が60歳以上の男女を対象として2024年10月に行った意識調査によると、経済面の暮らし向きに関する考えとして「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」と答えた人は約半数を占めた。「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」(15%)と答えた人も合わせると、シニア世代の多くは、家計にあまりゆとりはないものの、それほど心配なく暮らしていると答えている。

ただ、残りの約3割は「家計にゆとりがなく、多少心配である」もしくは「家計が苦しく、非常に心配である」と答えており、家計の現状や見通しに不安を感じている人も少なからずいることがわかる。回答者全体では家計にそれほど心配なく暮らしている人が過半数を占めるものの、経済的な暮らし向きに不安を感じている人も一定程度を占めており、シニア世代の経済状況には個人差が大きいことがうかがえる。

今後の生活に関する経済的不安では「物価上昇」が最多

では、シニア世代は今後の生活に経済的な面でどのような不安を感じているのか。回答をみると、最も多く挙げられているのは「物価が上昇すること」となっており、「収入や貯蓄が少ないこと」などを含む他項目が半数を下回るなか8割近くを占める。シニア世代全体では、経済的な暮らし向きについてはそれほど心配なく暮らしている人のほうが多いが、それらの人を含め、物価上昇の見通しを不安に思っている人はかなり多いと考えられる。

ただ、将来に経済的な不安を感じている人は、若い世代やミドル世代にも多い。当研究所が2025年3月に行った調査でも、60代では「将来の暮らしにおいて、経済的な不安がある」に「あてはまる」「どちらかといえばあてはまる」と答えた合計割合が若い世代より低く、不安がないと感じている人が多いという結果である。シニア世代には、貯蓄などの資産や公的年金など、就業による収入以外の収入源をもつ人も多いためであろう。

他方、

前述のようにシニア世代の経済状況には個人差が大きく、家計にゆとりがない人は、「物価が上昇すること」に加え「収入や貯蓄が少ないこと」等にも回答したと考えられる。このようなシニア世代においては、「収入や貯蓄が少ないこと」が、今後の生活に関する経済面での不安を感じさせ、節約に向かわせる場合があるのではないか。