(ブルームバーグ):国内通信大手のソフトバンクは総額10億ドル(約1440億円)のドル建て社債の発行条件を決定した。外貨建て社債の発行は同社にとって初めて。

起債したのは償還期間が5年と10年の2本立てで、発行額は各5億ドル。スプレッド(米国債に対する上乗せ金利)はそれぞれ90ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)、110bpに決まった。いずれも米国時間6月30日朝に示されたガイダンスを25bp下回った。事情に詳しい関係者が、非公開情報であることを理由に匿名で明らかにした。
ソフトバンクの外債デビューは、アジアでドル建て債の発行が加速する中で実現した。ブルームバーグのデータによると、投資家心理の改善や調達コストの低下を背景に、日本企業の6月の発行額は180億ドルと、月間ベースで少なくとも2020年以降の最大を記録した。
土屋アセットマネジメントの土屋剛俊社長は、「米国市場では現在、資金が潤沢でスプレッドはタイト化している」と指摘。「投資家はモバイル事業で一定のシェアを持ち、収益が安定しているソフトバンクには資金を投じやすい」との見方を示した。
ソフトバンクの広報担当、辻真以子氏は「アジア、欧州、米国の幅広い投資家から最終的に7倍以上の需要が集まった」とし、「今後の継続的な資金調達に向け、期待が持てる第一歩となった」と話した。

ソフトバンクは18年に、親会社のソフトバンクグループ傘下のモバイル事業子会社として東京証券取引所に上場。その後は金融や人工知能(AI)など、成長分野への事業拡大を進めてきた。昨年はS&Pグローバル・レーティングなどから信用格付けを取得し、調達手段の多様化を図る中で外債発行の準備を進めていた。
AI領域では米オープンAIの合弁会社を設立し、国内企業に向け生成AIを活用した業務代行サービスの展開を計画している。6月26日の定時株主総会では、宮川潤一社長が「攻めの投資姿勢を緩めることなく、積極的に行うことが企業価値向上につながる」とAI分野での投資に前向きな姿勢を示していた。
土屋氏は「AI投資の拡大で、国内金融機関のソフトバンクG全体に対するエクスポージャーは増している」とし、「資金を海外市場で調達するのは戦略的に理にかなっている」と語った。
(第5段落にソフトバンクのコメントを追加しました)
--取材協力:Finbarr Flynn.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.