北京市の工業地区で28日行われたサッカーの試合では、よろめきながら動く7歳児のようなロボットの姿が見られた。だが、人型ロボットと、それに搭載された人工知能(AI)にとっては画期的なイベントだった。

黒と紫のユニホームに選手番号を付けた小型の人型ロボットは前半、後半各10分の試合で対戦。身ぶり手ぶりで指示するコーチはいない。全て内蔵されたアルゴリズムによって制御されていた。試合は結局、5対3のスコアで終わった。

人型ロボットのサッカー試合(北京市)

見どころは、スピード感あふれるプレーというより、バランス感覚や敏しょう性、それにAIによる意思決定能力の実演だった。2体のロボットが重なって倒れる場面もあったが、得点のたびに拳を突き上げる姿も見られた。もっともゴールキーパーの守備は甘く、得点は難しくなかった。

今回の試合は目新しさだけでなくロボットの自律的な判断能力がいかに進化したかを示した。また、中国の教育機関の技術力をアピールする場ともなった。試合には、清華大学や北京信息科技大学などのチームが参加。中国新聞網の報道によれば、激戦の末、清華大学のチーム「バルカン」が優勝した。

中国はこの分野で世界に先んじようと、資金と人材を大量に投入している。米モルガン・スタンレーが今月発表したリポートによれば、中国のロボット市場は470億ドル(約6兆7800億円)規模で、既に世界全体の4割を占める。今後も年率23%のペースで成長し、2028年までに1080億ドル規模に達する見通しという。

登場したサッカーロボットは、深層強化学習(DRL)と呼ばれるAI技術を使用した。DRLは、パスやドリブル、シュートといった動きに加え、味方の動き予測するといった判断をリアルタイムで行うため、多くの似たような状況で試行錯誤を繰り返して得られる高度なシステム。

今回のようなイベントは、実世界で活用する事例を増やすという中国政府の方針を象徴しており、人のそばで安定性や安全性、効率を評価する実験場にもなっている。

原題:Humanoid Robots Play Soccer Poorly in Chinese Exhibition Match(抜粋)

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