(ブルームバーグ):イランがイスラエル国内の防犯カメラに不正アクセスし、リアルタイムの情報収集を行っていることが分かった。こうした事例は、世界の紛争地でも繰り返し問題となっており、機器の脆弱(ぜいじゃく)性が改めて浮き彫りになっている。
「自宅の監視カメラをオフにするか、パスワードを変更してください」。イスラエルの元サイバー防衛当局者、ラファエル・フランコ氏は今週初め、イランの弾道ミサイルがテルアビブの高層ビルを直撃した後、公共ラジオで市民にこう警告した。
フランコ氏は現在、サイバー危機対応会社コードブルーを率いている。「ミサイルの命中精度を高めるため、イランがここ数日、カメラへの接続を試み、どこにミサイルが着弾したか、何が起きたのか把握しようとしていることが分かっている」という。
イスラエル国家サイバー総局(INCD)の報道官も、イランがインターネット接続型カメラを標的にする事例が増えている事実を認めた。「戦争の最中、こうした試みが継続的に確認されており、現在も再び活発化している」と、同報道官は16日に述べた。イスラエル国内の着弾地点の写真はSNS上で出回っているが、公式には投稿規制が敷かれている。
イスラエルの敵対勢力が防犯カメラをスパイ目的で使用したのは今回が初めてではない。最近までINCD局長を務めていたガビー・ポートノイ氏によれば、2023年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲する前にも、民間の防犯カメラがハッキングされていた。
ポートノイ氏は「パレスチナ自治区ガザ周辺でハマスが民間カメラを使って情報収集したことは、大きな失態だった」と述べ、「長年にわたり公共・民間両方のカメラ数千台がハッキングされ、情報収集に使われていた」と明らかにした。
世界で問題に
同様の手口はロシアによるウクライナ侵攻でも確認されている。米国家安全保障局(NSA)など西側諸国の情報機関が5月に公表した共同勧告によれば、ロシアは国境検問所や軍事施設、鉄道駅周辺などで民間の監視カメラに不正アクセスし、物資の移動を追跡していたとされる。また「交通監視カメラなど、正規の自治体サービスも悪用された」と報告されている。
ウクライナは2022年、ロシアが空爆計画にカメラを利用しているとの警告を受け、監視カメラの使用を禁止。翌年には、街頭ウェブカメラの所有者に対してインターネット配信の停止を要請した。当時の政府声明では、「ロシアはミサイル攻撃を行う上で、現代型ウェブカメラの脆弱性を突き、リアルタイムで調整している」と指摘していた。
米国では2022年、米連邦通信委員会(FCC)が国家安全保障上の懸念を理由に、中国製監視機器の使用を禁止した。
民間の監視カメラ市場は世界的に拡大を続けており、調査会社マーケッツアンドマーケッツ・リサーチでは、同市場の規模が2024年の540億ドル(約7兆8800億円)から2030年には890億ドルに達すると分析している。
比較的安価で普及している民間の防犯カメラは、外部からの不正アクセスやハッキングを受けやすく、軍の動向を探る手段や爆撃対象を選定する手段として悪用されるリスクが指摘されている。
原題:Israeli Officials Warn Iran Is Hijacking Security Cameras to Spy(抜粋)
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