(ブルームバーグ):ある日の午後、ニューヨーク市マンハッタンのアッパーイーストサイドで若者たちが「TikTok(ティックトック)」で話題のスイーツを買おうと並んでいた。お目当てはクランブルの5ドル(約730円)のクッキーだ。
店の外では、17歳のメルレ・ベーレンスさんが、クランブルを特徴付けるピンク色の箱を手にし、写真を撮っていた。チョコレートケーキとチョコチップ、クッキードウ、ブルーベリーチーズケーキの4種類の非常に甘い特大クッキーを購入したという。
「ソーシャルメディアで見かけるし、米国に旅行に行くと友達や家族に伝えると、『クランブルのクッキーを買った方がいいよ』って言われた」と、ドイツからやって来たベーレンスさんは語った。
ユタ州で創業したクランブル・クッキーズは、SNSで人気を得たスイーツを巨大ビジネスへと成長させた。
フランチャイズ方式でチェーン展開し、米本土とプエルトリコ、カナダに1100店舗以上を構えている。
食品コンサルタント会社テクノミックによれば、カラフルで特大サイズのこのスイーツの推定売上高は2024年に12億ドルを突破。21年の3億9600万ドルから3倍以上に急増したという。
一方で、消費者は自家用車や旅行といった高額消費を控えており、より手頃な日常のぜいたくを求める傾向にあると、レストランコンサルタントのアーロン・アレン氏は言う。
スターバックスやチーズケーキファクトリーなどと取引実績のある同氏によれば、クランブルの店にやって来る若者たちは「『がんばったんだから、ごほうびがあってもいい。クッキーくらい食べさせて』という気持ち」なのだという。
新作スイーツ
ウォール街も注目している。事情に詳しい関係者によると、プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社のTSGコンシューマー・パートナーズは優先株と引き換えにクランブルの少数株を取得することで5月に合意。
ブラックストーンとゴルブ・キャピタルは、5億ドルのプライベートクレジットローンをクランブルに供与したという。
クランブルはブルームバーグ・ニュースに対し、TSGへの少数株売却を認めた。「TSGとの新たなパートナーシップによって、今後の成長と長期的なビジョンの実現が支えられると期待している」と広報担当者は説明した。
TSGとブラックストーンはコメントを控え、ゴルブ・キャピタルはコメント要請に応じなかった。
フランチャイズモデルを採用するクランブルは、各店舗から総売上高の8%を受け取る。さらに研修やマーケティング費用も徴収している。
毎週、TikTokと「インスタグラム」のフォロワー1600万人余りに向けて、新作のスイーツが映画のような映像と共に発表され、期間限定商品といううたい文句が、白い壁とオープンキッチンの店舗に人々を毎週引き寄せている。
ある動画では、女性従業員が「今週のラインアップを買えるのはこれが最後のチャンス」と従業員が語りかけていた。
DIAエクイティー・パートナーズの創業者クリフォード・ハドソン氏は、こうして毎週新作を打ち出す手法は、他にはない強みだと指摘。「従来の新商品ニュースとは全く次元が違う取り組みだ」と述べる。同氏はクランブルやフランチャイズとは無関係だ。
いとこ同士
クランブルの共同創業者は、ジェイソン・マクゴーワン、ソーヤー・ヘムズリー両氏。2人はいとこ同士だ。
17年にユタ州ローガンで1号店をオープンすると、22年には全米で691店舗を展開。事業拡大によって2人の保有株には大きな含み益が出ている。
ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、TSGとの取引前にはそれぞれの持ち株の価値が4億ドル近くに達していたと推定される。
広報担当者によれば、TSGとの取引前は、共同創業者の2人がクランブルの全株式を持っていた。資本を提供していたのは、マクゴーワン氏だけだったという。
開示資料に基づく算出によれば、クランブルは24年を約9100万ドルのEBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)で終えたが、同社は財務内容の詳細についてコメントを控えた。
「5ドルのクッキーなら、相当の利益率でなければ驚きだ」とDIAのハドソン氏は話している。
原題:Crumbl’s Oversized Sugary Cookies Enchant TikTok, Wall Street(抜粋)
--取材協力:Dylan Sloan、Olivia Fishlow、Crystal Tse.
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