米国系と欧州系の航空会社が、ペルシャ湾沿岸地域への運航を停止し始めた。イスラエルとイランの戦争が2週目に入り、米国はイラン核施設に対する攻撃の参加を検討している。

アメリカン航空グループは米国と、フィンエアーはフィンランドとそれぞれカタールの首都ドーハを結ぶ便を一時的に停止。ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスは湾岸地域での軍事行動と緊張の高まりを理由に、ドバイ便の運休を決めた。

エールフランスKLMは今週のドバイ便の一部を運休すると発表。エア・カナダもドバイ便の運航を停止。ブリティッシュ・エアウェイズは運航上の制約と領空規制を挙げ、バーレーン便を月末まで運休すると明らかにした。

中東ではイスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃し、イスラエルがパレスチナ自治区ガザに侵攻して以来1年8カ月にわたり緊張が続いているが、域内最大のハブ空港に大規模な影響が出るのは初めて。これまでの航空各社の運休はあったが、イスラエル周辺国やイランのミサイルが通過する国の領空に限られていた。

前例がなかった今回の決定は、中東の混乱からは切り離され、安全と見なされていた同地域の一角についても不安が高まっていることを浮き彫りにする。イランは米国が攻撃に参加すれば、湾岸地域の米軍拠点への攻撃やホルムズ海峡閉鎖に踏み切る可能性を示唆している。ホルムズ海峡はイランとアラブ首長国連邦(UAE)、オマーンに挟まれた、原油海上輸送の要衝だ。

ドバイはエミレーツ航空が、ドーハはカタール航空がそれぞれ拠点としており、中東と米国、欧州、アジアを結ぶ同地域で最も重要な空の玄関口となっている。

米国の警告

アメリカン航空の運休は、カタールの米国大使館が現地の米国人および職員に対し、「警戒を強化する」よう警告したことを踏まえた措置。

米国務省のウェブサイトに19日掲載された勧告によると、米大使館は、周囲の状況に注意を払い、デモや大規模な集会を避けることや、米国と公に関係する場所で慎重な行動を取り、「目立たないようにする」よう注意喚起した。

アメリカン航空は、フィラデルフィアとドーハを結ぶ1日1便の運航を22日まで停止すると発表した。19日にドーハを出発したフィラデルフィア行きの便を最後に運休となった。

同社は「安全とセキュリティーを最優先に状況を注視し、必要に応じて運航体制をさらに見直していく」と説明した。

ユナイテッドは、ニュージャージー州のニューアーク国際空港とドバイを結ぶ1日1便の運航を19日に停止した。「安全が確保された時点」で運航を再開するとしている。

デルタ航空とユナイテッドは今月、イスラエルのイラン攻撃を受けて米国からテルアビブに向かう便を運休していた。

20日はイスラエルが領空通過を禁止し、イランがテヘランの主要空港を閉鎖したため、空の便は大きく混乱している。イスラエルとイランが交戦する間、イラク、シリア、ヨルダン、レバノンは領空の閉鎖と再開を繰り返している。

原題:Airline Disruptions Reach Dubai, Qatar as US Mulls Iran Strike(抜粋)

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