中国はトランプ米政権に対し、大型の投資パッケージを約束するのと引き換えに、国家安全保障を理由とした対中規制の緩和を求めている。この提案をトランプ政権が受け入れれば、10年にわたり続く米国の中国封じ込め策は一変しそうだ。

非公表の協議内容だとして匿名を要請した関係者によれば、中国側の要求には、同国企業が米国に建設する工場で使用される中国製品への関税引き下げも含まれている。

中国側は9月に行ったマドリードでの会談で、これらの案を提示したと、関係者は説明。この会談で双方は、米国の一部議員が安全保障上の懸念を提起していた中国の字節跳動(バイトダンス)傘下にあるTikTokの米国事業について、運営を維持するための枠組みで合意した。

関係者の1人によると、中国側は今年先に1兆ドル(約147兆5000億円)の数字を示唆したことがあったが、現在提案されている投資額の規模は明らかでないという。

マドリードでの協議後、米通商代表部(USTR)のグリア代表はFOXビジネスに対し、「米国における中国企業の投資環境」を話し合ったと述べていた。この数日後に行われた電話首脳会談で、習近平国家主席はトランプ大統領に対し、米国に「中国企業が投資できる」環境づくりを求めたとされる。

中国はトランプ米政権に対し、大型の投資パッケージを約束するのと引き換えに、国家安全保障を理由とした対中規制の緩和を求めている

ホワイトハウスの報道官はこれらの協議に関する具体的な質問への回答を避け、米国は中国が現在の義務を確実に履行するかを注視していると発言。この義務とは、トランプ政権1期目に結んだ米中合意の第1段階を指しているとみられる。

中国商務省はコメント要請にすぐには応じなかった。中国は国慶節(建国記念日)の大型連休中。

在米中国大使館(ワシントン)の劉鵬宇報道官は「米国側が両国首脳の電話会談で達成された重要な共通認識を実行するために中国と協力することを望む」とコメントした。

中国は米国に対し数十年来の台湾に関する立場を変更するよう迫るなど、米政府にとって越えてはならない一線を試すような大胆な要求を重ねており、今回の提案もその流れの中にある。

トランプ政権1期目の通商協議が米国の輸出品購入に重点を置いていたのに対し、今は対米投資に焦点を移している点でも変化を示している。米国内への投資は国家安全保障審査の対象となる分野だ。

ブルームバーグの報道を受け、米下院・中国共産党に関する特別委員会のモーレナー委員長(共和)は、中国は「米国との合意を常習的に破っている」と述べ、投資規制緩和に警鐘を鳴らした。

「中国は何十年にもわたり、自国の市場や企業を対米戦略の武器としてきた。われわれはそうした企業に米経済へのさらなるアクセスを許すことはできない」と主張した。

 

原題:China Urges Trump to Lift Security Curbs in Push for Deals、China Urges Trump to Lift Security Curbs in Push for Deals (1)(抜粋)

(議会からの反応などを追加して更新します)

--取材協力:Josh Xiao、Colum Murphy、Linda Lew.

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