(ブルームバーグ):中国初となる国産アルツハイマー病治療薬を開発した製薬会社が、この薬の製造・販売を中止した。今後の展望に不透明感が広がっている。
緑谷医薬科技は10日、ブルームバーグの取材に対し、同薬のライセンスが失効しており、今はその更新が規制当局の最終審査段階にあると説明。その間は商業的な製造および販売を中断しなければならないと電子メールで明らかにした。
同社は5月末の社内通知で従業員に生産停止を伝えていたと、中国メディアの第一財経が9日に報じていた。
問題の薬は海産褐藻由来の酸性直鎖オリゴ糖の経口投与混合品「九期一」(GV-971)。中国当局が2019年にこの薬に条件付きで承認を与えた際には、17年ぶりに新たなアルツハイマー病治療薬が承認されたとして、大きな注目を集めた。
しかしその後、国内外の医療専門家の間では、この薬がアルツハイマー病患者の認知機能の低下をどの程度改善または抑制できるのかについて、懐疑的な見方が広がった。中国で実施された後期臨床試験は期間が比較的短く、結果にも一貫性が見られなかったためだ。
緑谷医薬は20年に世界規模での臨床試験を開始。中国と米国、欧州で計2000人の被験者を対象にする計画だったが、資金不足と新型コロナウイルス感染拡大の影響で試験は2年後に中止された。
同社によれば、今回の変更は一時的なもので、臨床試験用の薬剤供給には影響はないという。「関係当局と緊密に連絡を取り合っており、患者の治療ニーズに近く対応できると考えている」と電子メールでコメントした。
非上場の緑谷医薬は九期一について、中国での売上高を明らかにしていないが、同薬は22年に1箱約41ドル(約5900円)で公的医療保険の償還対象に追加された。
原題:Chinese Firm Halts Production of Controversial Alzheimer’s Drug(抜粋)
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