(ブルームバーグ):シンガポールの投資ファンド、3Dインベストメント・パートナーズは10日、日本製鉄株の保有を明らかにし、今月開催予定の定時株主総会で今井正社長、森高弘副会長兼副社長の両取締役の再任に反対するよう株主に呼びかける声明を発表した。
発表資料によると、3Dは日鉄の投資計画に関して、USスチールの買収や同社への追加投資、また脱炭素投資など10兆円にも及ぶと想定されるとして、日鉄の時価総額約3兆円を大きく上回ると指摘。「企業価値に対する不可逆的な毀損(きそん)のリスクを高めている」と懸念を示した。
関係者によると日鉄とUSスチールは今月18日に設定された契約締結期限を前に、トランプ米政権との間で約2兆円規模の統合について最終合意する見通し。これに対して、3Dは日鉄が今後の資本配分について、株主への説明責任を果たしていない点などを問題視した形だ。
今井氏については企業価値毀損の懸念を生じさせている責任があり、森氏については財務IR担当としてこうした資本配分に対する説明責任を放棄していると言及。日鉄株主に対して、今月24日の株主総会で両氏の再任に反対票を投じるよう呼びかけた。森氏はUSスチール買収を所管するプロジェクトのリーダーとして、交渉の最前線にも立っている。
発表資料によると、3Dは遅くとも2024年11月から日鉄に対し、建設的な対話を試みてきた。対話の中でUSスチール買収に関し、株主総会に諮って直接株主からの信認を得るよう要望したが、日鉄側に拒否されたという。3Dは日鉄株の保有比率は5%未満で、総会に株主提案はしていない。
3Dによる今井社長らの取締役再任反対の呼びかけについて、日鉄の広報担当者は個別株主に関わることについては回答を控えたいとした。
3Dはほかにも日鉄が日鉄ソリューションズなど多くの上場子会社を抱えていることがコングロマリットディスカウントを招いていると指摘。3Dは日鉄ソリュの株主でもあり、同社に対しても企業価値の最大化に向けて日鉄からの独立性を確保するためのガバナンス改善を申し入れている。
3Dはサッポロホールディングス(HD)に不動産子会社の分離を要求したほか、過去には東芝や富士ソフトの株主として会社側に経営改善を求めるなど日本企業に対して積極的に働きかけを行っている。
(日鉄のコメントを追加して記事を更新します)
--取材協力:稲島剛史.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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