(ブルームバーグ):テニスコートの周囲をぐるりと囲み、一球ごとにボールのイン・アウトを見極める線審。四大大会の一つ、英国のウィンブルドン選手権でおなじみの光景が変わりつつある。
大会の主催者は、6月末から始まる2025年の選手権から線審を廃止し、機械による判定の全面導入を決めた。12台のカメラの映像からボールの着地点やサーブ時の足の位置をリアルタイムで判定するシステムで、全豪オープンと全米オープンですでに採用されている。
この技術を提供するのが、ソニーグループ傘下の英ホークアイ・イノベーションズだ。ロケットの弾道を研究していた科学者が01年に設立し、ソニーが11年に買収した。ボールの軌道やビデオリプレーなどの技術をいかして開発されたシステムは、野球やサッカーなど25種類の競技で判定支援やプレー分析に使われているという。
ソニーG子会社でエレクトロニクス事業を中心に担うソニーの執行役員で、スポーツエンタテインメント事業部長を務める平位文淳氏は引き合いは強いと説明する。新型コロナウイルス禍で審判の離職が相次ぎ人手不足が起きているほか、観客を飽きさせないため試合時間の短縮も課題になっており、判定の「自動化要請がどんどん強まっている」ためだ。
今年は米ナショナル・フットボールリーグ(NFL)で攻撃側の獲得距離の測定に採用される予定。システムで測定したプロ野球全12球団のプレーデータをコンテンツとしてファン向けに提供する取り組みも始める見通しだ。
先頭を走る
ゲームや音楽、映画から半導体まで多様な事業を抱え、年間売上高が10兆円超のソニーにとって、スポーツ事業は稼ぎ頭にはほど遠い。だが伸びしろは期待できる。アイルランドの調査会社、リサーチ・アンド・マーケッツによると、世界のスポーツ市場は28年に23年比で3割増以上の約6500億ドル(約93兆円)に達する見通しだ。
ソニーはスポーツ事業の詳細な収益は公開していないものの、21年度時点で200億円弱の売り上げ規模。平位氏によると、目標とする21-26年度の年平均成長率(CAGR)17%を上回るスピードで順調に成長しているという。
同社はホークアイをはじめ、海外企業の買収でスポーツビジネス分野の技術獲得を強化しており、まずはここ数年で買収した企業の統合プロセス(PMI)を優先するという。ただ心拍などのバイオデータやメンタル状態を測る技術などまだ保有していない技術はあり、「魅力的なものがあればしっかりやっていきたい」と合併・買収(M&A)への意欲を平位氏はにじませた。
尚美学園大学の田中充准教授(現代スポーツ論)は、米大リーグ(MLB)がトラッキングシステムをデンマーク企業の「トラックマン」からホークアイに移行するなど「現時点でスポーツテック分野の先頭を走っている」とみる。とはいえ、スポーツテック業界には多様な業界から企業が参入し技術革新が絶えず行われており、「ホークアイを超える技術が登場すれば、市場での優位性を失うリスクがある」と指摘する。
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