(ブルームバーグ):フジ・メディア・ホールディングスの清水賢治次期社長(フジテレビジョン社長)は、都市開発や観光を手掛ける不動産事業について、将来的にはスピンオフ(分離・独立)を含め「あらゆる選択肢」があると述べた。同事業を巡っては、株主で米投資ファンドのダルトン・インベストメンツがスピンオフを求めている。
清水氏は9日のインタビューで、不動産事業の切り離しに対する要求は株主総会後も続くとみており、「企業価値を上げていかないとそのような批判にさらされる」と指摘。ただ成長戦略の柱に掲げるメディア・コンテンツ事業では、番組やキャラクターなど知的財産(IP)の収益化には数年かかると予想し、不動産事業は当面必要だとの見方を示した。その後は、同事業の切り離しも成長加速も「どちらもある」と言う。

フジHDは元タレントの中居正広氏が起こした女性との性的トラブルへの対応が批判を招き、スポンサー離れによる深刻な広告収入減への対応が課題となっている。足元では不動産事業が収益を支える中、ダルトンは本業のメディア・コンテンツ事業単独での成長を目指すべきだと主張。信頼回復と持続的成長の両立が問われており、資産戦略とIP戦略の巧拙が企業価値を左右しかねない。
株主提案
ダルトンの共同創業者、ジェイミー・ローゼンワルド氏は5月のインタビューで、不動産事業のスピンオフで企業価値が2倍になる可能性があり、個人的には1年以内の実現を期待していると語った。また、ダルトンは25日に開催予定の定時株主総会に、SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長ら12人の取締役候補を提案した。
フジHDは株主総会で、清水氏を除く取締役候補全員を入れ替えた11人の選任を諮る。清水氏は会社が提案した11人は「今やれるベスト」な人選だと自信を示した。一方で、ダルトン側の取締役候補が選任されたとしても目指すのは企業価値の向上であり「目的が同じであれば議論はできる」と述べた。
5月に公表した改革アクションプランでは、3年間で1000億円以上の政策保有株式を売却する方針を示しており、「この1年間でできる限りやりたい」と述べた。自社だけで判断できるものではないとしたものの、既に200億円弱の売却を実施したという。
1983年にフジテレビに入社した清水氏は編成畑が長く、アニメやドラマの制作に携わった。「ドラゴンボール」シリーズや「ちびまる子ちゃん」などの人気アニメも手掛けた。
1990年に放送を開始したちびまる子ちゃんは、原作を読んだときに子供をリアルに描いていたことが「衝撃的で面白かった」が、最初の試写会ではスポンサーらが試写終了直後に席を立つなど、立ち上げに苦労したという。当時と比べても、「今の苦労はかつて経験したことがないほど」だと述べた。
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