米財務省と欧州連合(EU)の両者が制裁対象とするタンカーが運ぶロシア産原油を、太陽石油が受け取る。

日本がロシア産原油を輸入するのは過去2年余りで初めて。この原油はロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」で生産されるサハリンブレンドで、サハリン2に関連する日本の取引は制裁対象外とされている。それでも、ロシアのウクライナ侵攻が4年目に入り、世界の買い手の間でロシアとの取引に対する警戒が緩んでいることが浮き彫りになった。

ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによると、太陽石油はタンカー「ボイジャー」が輸送する60万バレルのサハリンブレンド原油の供給を受ける。この原油は5月25日、サハリン南部のプリゴロドノエで積み込まれた。

米欧が制裁対象とする石油タンカー「ボイジャー」、日本にサハリン産原油を輸送

日本はエネルギー安全保障を理由にサハリンブレンドの輸入が認められ、この制裁適用除外はEUが5月21日に決定した第17次対ロシア制裁パッケージで来年6月下旬まで延長された。米国の制裁適用除外は6月28日までとなっているものの、通常は延長される。

だが、主要7カ国(G7)の一つが、制裁対象のタンカーが運ぶ原油を受け入れたという事実は、米国のトランプ政権がロシアの石油供給維持に熱心だという認識を強める。

太陽石油の広報担当者はこの取引を認めた上で、経済産業省の要請を受けて購入したと説明した。サハリン2では天然ガスと原油が同時に生産されるため、原油を取引しないとなればサハリン2の生産に影響が生じかねないと、この広報担当者は付け加えた。

経産省の担当者は、米国政府に確認したところ、日本はサハリン2からの石油輸入に、制裁対象のタンカーを利用できるとの回答を得たと説明した。また、EUには二次制裁がなく、日本が制裁対象のタンカーを使用しても影響を受けないとしている。

ブルームバーグがまとめた船舶追跡データによると、ボイジャーは9日に愛媛県の菊間港に入港し、この原油の荷下ろしを行った。

慎重姿勢が後退

ロシアのウクライナ侵攻前、日本の製油業者はサハリン産原油を平均して月4便輸入していた。

侵攻開始後にサハリン2についてロシアが導入した新たな所有構造の下、三井物産と三菱商事はそれぞれ12.5%、10%の権益を維持したが、日本は他の買い手と同様に購入を控えるようになった。

ロシア産原油の輸入国の一部は米制裁対象のタンカーが輸送する積み荷の受け入れに消極的で、こうしたタンカーの多くは制裁対象とされた後、稼働を長きにわたり停止していた。だが、トランプ政権発足後、買い手の慎重姿勢は後退しつつある様子だ。

また、例えばインド向けの輸送はほぼ制限なく続いている。

同様に1月下旬以降、ロシア産原油は中国とシリアの買い手に米制裁対象のタンカーで少なくとも20便輸送された。制裁対象のタンカーが途中まで運んだ後に制裁対象外の船舶に積み荷が移され、最終目的地に輸送された例を含めると、はるかにもっと多い。

ボイジャーは旧称がベルナツキー・プロスペクトで、バイデン政権時代の今年1月に米財務省外国資産管理局(OFAC)が他の160隻のタンカーとともに制裁対象とした。EUも翌月に続いた。

ロシア国営海運会社ソフコムフロートは、ボイジャーを含む複数のタンカーをアラブ首長国連邦(UAE)の2社に移管するなどし、制裁回避を図っていた。

ソフコムフロートはコメントの要請に応じなかった。

原題:Japan’s Taiyo Oil Imports Russian Crude on Sanctioned Tanker (1)(抜粋)

(経産省のコメントを加え更新します)

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