新型コロナウイルスのパンデミックから5年。リモートワークがかつてないほど広がったこの期間を経て、銀行経営陣はオフィス復帰をますます強く求めている。

だが、いざ出社を進めようとすると席が足りないという問題に直面するケースが相次いでいる。

JPモルガン・チェースは最近、英国とパリで数千席分のオフィスを新たに契約した。

スペインのビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)も、英国で法人・投資銀行部門を拡大する中、スペース不足に直面している。

パンデミック後に大幅なオフィス縮小計画を打ち出していた英銀HSBCホールディングスも、現在ではロンドンで最大7700席分の不足が予想される。

同行はカナリーワーフの本社を退去しロンドンのシティーにある小規模な新本社へ移転することを2023年に決めていたが、現在はカナリーワーフの現本部の近くで追加のビル賃借を交渉中だ。

パンデミック直後にはほとんど誰も予想しなかったようなオフィス不足が起こっている。出社義務の復活、従業員を呼び戻すための広めのレイアウト、採用拡大などにより、欧州大陸全体でオフィス需要が急増した。

一方で、長年にわたる開発業者の慎重姿勢の結果、供給が追いつかず席不足がオフィス復帰を進みにくくさせている。

不動産開発会社スタンホープのリース担当ディレクター、ケビン・ダルビシ氏は「パンデミック期やその直後に盛んに言われていた『オフィスの死』という説は、完全に誇張されていたことが証明された」と語った。 「特にロンドンでは」それがはっきりしているという。

HSBCは来年カナリーワーフからロンドンのシティーへの移転を開始する予定

ロンドンでは世界金融危機以降、銀行によるオフィス需要は長期的な減少傾向にあり、それは英国の欧州連合(EU)離脱とパンデミックによってさらに加速した。

不動産仲介大手CBREのデータによれば、ロンドンのシティーとドックランズにおける銀行のオフィス利用面積は、2011年時点で約2190万平方フィートだったが、10年後には1610万平方フィートにまで縮小した。

クレディ・スイスの看板が外されたカナリーワーフのビル

CBREでロンドンのオフィス入居者向け業務を統括するジェームズ・ニコルソン氏は「多くの銀行が、過去10-15年にわたり、リソースと人員構成を戦略的に見直してきた」と述べた。

しかし、その流れに変化の兆しが出ている。不動産仲介会社クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドのデータによれば、昨年ロンドンで新たにオフィススペースを借りた業種の中で最も大きく面積を増やしたのは銀行・金融機関だった。

不動産大手ブリティッシュ・ランドのサイモン・カーター最高経営責任者(CEO)は先月「オフィス復帰は本格化している」と述べ、週の半ばのオフィス稼働率はパンデミック前の水準に戻っていると指摘した。

原題:Banks Want Staff Back at the Office. There Aren’t Enough Desks(抜粋)

--取材協力:Jorge Zuloaga、Claudia Cohen、Noele Illien、Arno Schuetze、Harry Wilson.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.