トランプ大統領とイーロン・マスク氏との決裂が波紋を呼んでいるが、今後、トランプ2.0はどこへ向かうのか?ブルームバーグのシニアエディターであるデレク・ウォールバンク氏に話を聞いた。
現在、シンガポールを拠点に活動するウォールバンク氏は、トランプ政権を第1期の時から取材しているが、日本はトランプ大統領にとって「特別な存在として位置づけられている」と指摘する。
トランプ政権にとって日本は「特別な存在」

「日本の皆さんはトランプ氏と安倍元総理の友好的な関係をよくご存じだと思いますが、その関係は2期目のトランプ政権と日本の石破政権にも受け継がれています」
「アメリカは日本について戦略的に、世界でより大きな役割を果たせる国だと考えており、日本が経済面で成し遂げてきたことを高く評価していると思います」とウォールバンク氏は語る。
「ただ、トランプ氏は、時には日本が特定の分野で非常にうまくやっていることへの不満も表明しており、アメリカ製品が東京をはじめ、日本の多くの地域に広まってほしいと考えています」
しかし、不満があるとはいえ、ウォールバンク氏は、「どんな交渉においても日本はトランプ政権にとって他国より特別な位置にいる」としていて、トランプ大統領自身が日本との関税交渉に姿を見せたことの重要性も強調した。
「トランプ大統領が日本との関税交渉に参加したことは、ホワイトハウスが日本との取引をいかに重要視しているかを示しています。大統領が日本を優先しているのは明らかです」
「イギリスと大枠合意に至ったことや中国との緊張緩和がみられたこと。そして90日間の交渉が、比較的まだ序盤にあることも日本にとっては良い流れだと思います」
世界秩序の変化と「強いアメリカ」の行方

今後の世界秩序の変化について問われたウォールバンク氏は、「ゼロサム的な問題とは考えていない」と前置きした上で、「アメリカは今後も大きな経済力と軍事力を持つ強国であり続けるでしょう」と分析した。
一方で、「アメリカはグローバルな世界での立ち位置を模索しており、唯一の超大国である責任を負う事に、多くのアメリカの有権者は懐疑的です」とした上で、「アメリカには超大国であり続けたいとの思いはあるものの、その立ち位置や役割を考え直す動きが出ています」
また、ウォールバンク氏は、世界がより多極化していく可能性を指摘し、中国、インド、日本、オーストラリアの台頭も含めて「次の20年は今よりずっと多極化が進むだろう」と予測する。
ただ、「“アメリカは終わった”というような報道は大げさで、アメリカは今後も存在感を維持していくでしょう。なのでいわゆる“アメリカ売り”に賭けるのはリスキーだと言えます」と締めくくった。