(ブルームバーグ):6月後半の株主総会シーズンを前に、上場企業が公開する株主総会招集通知書に投資家の目がくぎ付けとなっている。株式市場で知られるアクティビスト(物言う株主)の名前が突如登場し、株価の急騰につながるケースが相次いでいるためだ。
総会招集通知書の中には各社が発行する株式の詳細情報が記載され、投資家は発行済み株式総数や現在の株主数、大株主上位を確認することが可能だ。日本株市場では先週、セメント大手一角の住友大阪セメントや油圧機器大手のカヤバの総会通知書で旧村上ファンドの流れをくむアクティビストの野村絢氏が大株主上位に名を連ね、両社の株価は大きく上げた。

総会通知書はおおむね午前8時に公開されるケースが多く、取引開始前に投資家が知り得る売買情報の一つとなっている。タイムリーに各銘柄の主要株主情報を確認できる手段としては、アクティビストや投資ファンド、個人株主などの保有割合が5%を超えた場合に関東財務局への報告義務が発生する大量保有報告書や変更報告書がある。
一方、総会通知書ではカストディアンと呼ばれる金融機関が登場し、投資家の代わりに有価証券の管理などを行う影武者の存在が真の株主の把握を難しくさせる場合もある。
市場関係者の一部で実質株主ウォッチャーとして知られるX(旧ツイッター)アカウント「Maron」氏への注目度の高まりは、株主特定の難しさを浮き彫りにした。同氏のアカウントで、シンガポールのアクティビストとの関連が取り沙汰される信託銀行名を含む主要株主リストが投稿されると、百貨店大手のJ.フロントリテイリング株は5月中旬に急騰した。
Maron氏は先週、Xに全ての取材要請を断っていると投稿。ブルームバーグは改めてコメントを求めたが、身分や投稿動機など自身の詳細について明らかにしなかった。
総会通知書に対する株価の感応度が上がった要因として、アクティビストの存在感が増したことが挙げられる。ブルームバーグのデータによると、アクティビストは年初から既に89の株主提案などを含む動きを見せ、昨年1年間の153件に迫る勢いだ。保有不動産の売却や増配、自社株買いなどを求める事例が多い。
三井住友DSアセットマネジメントの武内荘平シニアファンドマネジャーは「株主への分配が増えるだろうとの期待で株価が上がっているのだろう」と受け止める。アクティビストは企業統治(コーポレートガバナンス)や資本効率の改善を求め、キャッシュをため込む企業を標的にするケースが多いためだ。
東京証券取引所などが上場企業に対し定めたコーポレートガバナンス・コードの存在に加え、2年前から東証が資本コストと株価を意識した経営で企業価値の向上を促している影響もあり、「企業もお金の使い方を考えるようになり、アクティビストの目線と一致してきている土壌はある」と武内氏は言う。
ブルームバーグの調べでは、日本株市場で影響力を増すアクティビストは昨年末までに少なくとも146社の株式を取得し、遊休不動産の売却や経営戦略の変更、自社株買いなどを要求した。日本取引所グループによると、東証に上場する3月期決算企業の8割以上が6月最終週に定時株主総会を開催する見込み。企業は総会当日の2週間前までに株主に通知を発するよう会社法で定められている。
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