(ブルームバーグ):第2次トランプ政権下でほぼ新常態となった株価の乱高下。米国市場で関税交渉を巡る不安が再燃する中、これに対応する売買戦略を模索する動きが出ている。
ノムラのストラテジスト、チャーリー・マケリゴット氏が先週公表した分析によると、トランプ大統領が関税に関して強硬発言を行う度にS&P500種株価指数先物を空売りし、5日後に買い戻す戦略を繰り返した場合、2月初め以降のリターンは12%に達した。一方で、その間静観し続けた場合、投資家のリターンは実質的に横ばいにとどまるという。他にも、貿易戦争を巡る緊張の増大と緩和のパターンが継続するとの見立てから、同様の戦略を探る動きが出ている。
こうした取引戦略は間もなく試されそうだ。S&P500種が足元で大きく値上がりしたタイミングで、トランプ氏は再び関税を巡り態度を硬化させている。4日から鉄鋼・アルミニウム関税を50%に引き上げるほか、米中は互いに先月の包括合意に違反しているとして非難の応酬を繰り広げている。
「S&P500種は今がおそらくレンジの上限だ」と話すのはIURキャピタルの創業者でマネジングディレクターのギャレス・ライアン氏だ。同氏は足元で米中の対立が再燃する中、S&P500種に連動する上場投資信託(ETF)「SPDR S&P 500トラスト」に対して弱気のポジションを構築している。
シティグループの米国株式トレーディング戦略責任者のスチュアート・カイザー氏は「関税に関する悪いニュースが伝わり、それが軌道修正されることで、ボラティリティーが戻ってくる」のがパターンになっていると話す。
株式市場は今年に入り、トランプ氏の政権復帰によって規制緩和や減税が進み、経済成長が加速するとの期待から強気ムードに包まれた。S&P500種は2月に史上最高値を更新。だがその後は、トランプ氏がまず関税政策を優先する姿勢を示したことで投資家の熱気は一気に冷めた。
トランプ氏がメキシコ、カナダ、中国に対する関税を発表したことで、S&P500種は3月半ばまでに、調整局面入りとされる直近高値から10%余り下落した。一部関税が停止または軽減されたことで株価は反発したが、それも長続きしなかった。4月2日、トランプ氏が事実上すべての米貿易相手国・地域に上乗せ関税を課すと発表すると、S&P500種は弱気相場入りの瀬戸際に追い込まれた。
だが、その時期に果敢に買いを入れた投資家は、現在の水準まで20%の上昇を享受するに至った。背景には、最終的に関税が懸念されていたほどの水準にはならないとの見方がある。
前出のカイザー氏によると、このような株価の乱高下を経て、投資家はボラティリティーが上昇しても、すぐに沈静化すると見込んで行動するようになった。
「ボラティリティー指数(VIX)が急上昇するたびに、投資家はそれに追随するのではなく、逆張り的な戦略に走る傾向がある」という。
もっとも、投資家が関税を巡るトランプ氏の発言に慣れ、他の材料に関心がシフトするのに伴い、市場のボラティリティーが和らぐ可能性もある。市場は最近のトランプ氏の動向を冷静に受け止めており、S&P500種は直近高値を約3.4%下回る水準にとどまっている。
シュワブのトレーディング・アンド・デリバティブ担当ストラテジスト、ジョー・マッツォーラ氏は、オプション市場にも同様の傾向が見られ、強気・弱気いずれの極端な見方も現在は反映されていないと指摘する。
「関税に関するトランプ氏の発言にもはや同じ衝撃力はない」と同氏。「足元では大きな値動きは見られない」と述べた。

原題:Wall Street Games Out How to Profit From Tariff Chaos (Correct)(抜粋)
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