(ブルームバーグ):6月3日に予定されている韓国大統領選挙では、最大野党「共に民主党」から出馬する李在明氏がリードしている。同氏が当選すれば、韓国政府は、対立している米中どちらとの関係を重視するかについてより慎重な姿勢を取るとみられるほか、北朝鮮を対話に引き込む新たな取り組みや日本との緊張が高まる可能性もある。
李氏はここ数週間、外交政策において米国や日本への批判的な姿勢を抑えて中道寄りの立場にシフトしている。

27日のテレビ討論会では「米国との同盟は韓国外交の基盤だ」とした上で、「この上に韓米日の協力体制を構築する必要がある」と述べた。
一方で、李氏は最近、保守政権が進めた米国や日本との関係を後退させる意図はないとしつつ、米国との関係だけに「一方的」に縛られるわけにはいかないとも述べている。
同時に「中国やロシアとの関係を無視すべきではない。適切に関係を管理する必要があり、現在のように敵対的な姿勢を不必要に取る必要はない」とも語っている。
神田外語大学の阪田恭代教授は、李氏が依然として韓国の進歩系政治家として行動しており、米国を第一に据えつつも一本足の外交は避ける姿勢を示していると述べる。
直近の差し迫った課題である米国の関税措置については、これまでのところトランプ政権との早期交渉を急ぐ必要はないとしているが、政策声明の中では関税問題を乗り越えるために米国と合意する可能性に言及している。

一方、保守系与党「国民の力」候補の金文洙氏は、米韓同盟を最優先する立場を取っており、当選すればトランプ大統領との首脳会談開催を即座に目指し、関税問題の解決や経済協力の深化を図るとしている。また、北朝鮮の脅威に備えるため、1991年に撤去された米国の戦術核兵器の韓国への再配備を主張している。
これに対し、李氏は核兵器の再配備について「現実的ではない」としている。
28日に発表された世論調査によると、李氏の支持率は49%に上昇し、金氏の36%、保守系野党の「改革新党」の李俊錫氏の9%を上回っている。
日本による朝鮮半島の植民地支配を経て、日韓が国交を正常化してから60年の節目にあたる中、日本では李政権が誕生するかどうか注目が高まっている。
尹錫悦前政権が2023年に日韓両国の懸案である韓国人元徴用工問題を巡り、元徴用工に対して韓国政府傘下の財団を通じて弁済する計画を決定したことに対し、李氏は厳しく批判。これを覆すような動きがあれば、日韓関係は再び悪化し、安全保障などでの協力に影響が出かねない。
李氏は、徴用工問題やその他の歴史的問題をどう扱うかについては明言していないが、日本政府との間にしっかりした関係を築くための土台を整えたいと語っている。
阪田教授は、日本は韓国に中道的な外交・安全保障政策を期待しており、李氏もこれまでそのような立場を表明しているとした上で、関係悪化の火種になる懸念は依然として残っていると指摘した。
原題:US Ally South Korea Set to Improve China Ties If Lee Wins Vote(抜粋)
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