27日の米金融市場では、日本の財務省が国債発行額に関するアンケートを市場関係者に送付していたとのブルームバーグ報道で、世界的に債券高が進んだ。米国株はリスク選好の改善を受けて上昇。ドルは主要通貨に対して全面高となり、円は対ドルで144円台半ばに下落した。

株式

米国株式相場は反発。S&P500種株価指数は2%上昇した。消費者信頼感の急回復や米国と欧州連合(EU)の通商合意への期待が追い風となったほか、世界的な債券高も地合い改善に寄与した。

S&P500種は5営業日ぶりに反発。決算発表を翌日に控えたエヌビディアが大型ハイテク株の上昇をけん引した。

ナスダック100指数は2.4%、ダウ工業株30種平均は1.8%それぞれ上昇。エヌビディアが3%余り値上がりしたほか、アップルも約3年ぶりの長期連続下落局面を脱した。

S&P500種は5営業日ぶりに反発

トランプ米大統領はEUが通商交渉を加速していることを「前向きな動き」だと評価した。トランプ氏はEUに対して50%の関税を課す構えを示していたが、フォンデアライエン欧州委員長との電話協議を受け、発動期限を7月9日まで延期した。

ブレイブ・イーグル・ウェルス・マネジメントのロバート・ルジレロ氏は「EU関税の発動期限が7月9日まで延期されたことは、通商問題全体の解決に向けた重要な一歩だ。これは貿易合意が今後も続く可能性を高めるものであり、市場がまさに期待しているメッセージだ」と述べた。

米民間調査機関のコンファレンスボードが発表した5月の米消費者信頼感指数は急回復し、4年ぶりの大幅上昇となった。米国と中国が関税を一時的に引き下げることで合意したことを受けて、景気や労働市場の見通しが改善したことが背景にある。

だが、LPLファイナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチ氏は、こうした回復は一時的な現象にとどまる可能性があるとみている。

「資本市場では今のところ、通商政策がボラティリティーの主因となっており、こうした状況は当面継続しそうだ」とローチ氏は指摘。「インフレ期待が不安定になれば、米連邦準備制度理事会(FRB)は当初の想定よりも長く政策金利の据え置きを迫られる公算が大きい」と述べた。

市場は28日発表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨に加え、同日引け後のエヌビディア決算に注目している。

前出のルジレロ氏は「エヌビディアの決算は同社株がここ10カ月間続いた比較的狭い取引レンジを抜け出せるかどうかを判断する上で重要だろう」と指摘。「関税措置の影響による下げからほぼ完全に回復しており、バリュエーションは再び割高な水準にあるが、最高値を更新するには何らかの起爆剤が必要だ」と述べた。

米国債

米国債相場は上昇。世界的な債券高の流れが米国市場にも波及した。30年債の利回り低下が顕著で、一時10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り低下し、4.93%をつけた。

日本の財務省が国債市場の混乱を受け、国債発行額についてアンケートを市場参加者に送付していたことが明らかになり、日本当局が借り入れ計画の見直しを検討している可能性が意識された。これを受けて、足元の長期金利上昇で神経質になっていた市場に安堵(あんど)感が広がった。

ペッパーストーン・グループの上級調査ストラテジスト、マイケル・ブラウン氏は「発行額減少の思惑が、米国債に追い風となっている」と指摘。「日本国債の供給減少は、長期債の買い手を米国債市場に向かわせる可能性が高い」と述べた。

2年債入札(発行額:690億ドル)が堅調な内容になったことも相場の追い風となった。最高落札利回りは3.955%と、入札前取引(WI)水準の3.965%を1bp下回った。

日本政府が国債供給を減らせば、少なくとも需要に関する懸念を幾分和らげる見通しだ。しかし、財政赤字のファイナンスを巡る世界的な懸念を解消するわけではなく、この日の国債上昇が短命に終わる可能性もある。

INGグループのシニア金利ストラテジスト、ベンジャミン・シュローダー氏は「長期債利回りは一定の安堵感を示しているが、今後数週間から数カ月に、米国債利回りが弱気トレンドから脱却するのはとりわけ難しいだろう」と述べた上で、「財政軌道は依然として重要だ」と続けた。

為替

ニューヨーク外国為替市場では、ドルが主要通貨に対して全面高。日本の国債利回り低下を背景とする円売り圧力で、ドル買いに弾みがついた。

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.5%高と、2週間ぶりの大幅上昇。

円は対ドルで一時1.1%安の144円45銭まで売られた。

次の手掛かりとして、市場は28日に実施される日本の40年物国債入札に注目している。

スチュアート・ジェンキンス氏らゴールドマン・サックスのストラテジスト陣は「この日の円売りにより、ロングには望ましい水準を提供すると考えているが、長期金利の動向に絡むボラティリティーの高まりは今後も続く見通しだ。明日の40年物国債入札が次の重要なイベントとなる」とリポートで記述した。

ユーロは対ドルで下落。フランスのインフレ率が5月に欧州中央銀行(ECB)の目標である2%をさらに下回り、4年半ぶりの低水準となったことが材料視された。

原油

ニューヨーク原油相場は下落。貿易を巡るEUと米国の緊張が緩和に向かう兆しが好感されたものの、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」による大型増産への警戒の方が大きかった。

前日は英米の両方で市場が休場。この日はドルが反発し、ドル建てで取引されるコモディティー(商品)の投資妙味が低下した。

原油相場は1月中旬から下落基調にある。OPECプラスは市場が予想していたよりも速いペースで供給引き上げを決め、原油価格を圧迫した。同時に需要は世界的な貿易戦争に脅かされている。価格はバレル当たり61ドル付近でほぼ安定するようになった。OPECプラスの産油方針は数日中に明らかになる。

ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物

午前の取引で原油相場は一時的にプラス圏に浮上する場面もあった。新たなロシア制裁が近日中に発表される可能性があるとCNNが報じ、ロシア産原油の供給が滞るリスクが高まった。トランプ米大統領は週末、ロシアによる大規模なウクライナ攻撃を非難し、制裁強化を検討していると述べた。

CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は地政学的な環境は強弱材料が混在していると指摘。この日の相場下落は商品投資顧問業者(CTA)の短期戦略によるテクニカルな売りが主因だと説明した。

ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物7月限は、前営業日比64セント(1%)安い1バレル=60.89ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント7月限も1%下げ、64.09ドル。

ニューヨーク金相場は大幅安。ドルの反発に加え、米国とEUの貿易を巡る緊張が緩和に向かうとの期待を背景に安全資産の需要が低下した。

日本の財務省が国債発行額を調整する用意があるとの見方が広がり、世界的に債券相場とドルが上昇したことも、金売りを誘った。ドル相場の上昇はドル以外の通貨による金買いを割高にする。

投資家のリスク回避姿勢も弱まりつつある。EUと米国は行き詰まっている貿易協議の打開に向けて、今後6週間かけて合意を目指す意向を示した。トランプ大統領の2期目が始まって以来、両者の経済関係に初の融和ムードが広がっている。

米政府が一部の貿易相手国と交渉を進展させている兆しもあり、金のような安全資産の需要も影響を受けている。ブルームバーグの集計によれば、金連動型の上場投資信託(ETF)は、4月中旬に金保有量が約1年ぶりの高水準に達して以降、5週連続で流出が続いた。

しかし、市場では様子見姿勢が続いている。トレーダーらは膨張する米財政赤字や貿易交渉、中東やウクライナの紛争激化といったリスクを見極めている。

金相場は年初から25%余り高騰し、先月に過去最高値を記録。現在はこの水準を約200ドル下回っている。

投資家の関心は、30日に発表される4月の個人消費支出(PCE)コア価格指数にも向かっている。

金スポット価格はニューヨーク時間午後2時24分現在、前日比44.42ドル(1.3%)安い1オンス=3299.42ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は、前営業日比66.20ドル(2%)安の3328.30ドルで引けた。

原題:S&P 500 Climbs 2% on Economic and Trade Optimism: Markets Wrap

US Stocks Rally on Easing Tension With EU, Consumer Confidence

Treasuries Gain as Investors Show Off Appetite for Global Debt

Dollar Rebounds, Yen Reverses Gains Amid Bond Rally: Inside G-10

Oil Declines as OPEC+ Supply Meeting Overshadows EU Trade Thaw

Gold Extends Losses as Dollar Pushes Higher on Trade Talks(抜粋)

--取材協力:Andre Janse Van Vuuren.

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