(ブルームバーグ):利回り面から日本の株式に対する国債の相対的な割安感が顕著になっている。超長期債利回りの歴史的急騰がきっかけで、今後債券への見直し買いが活発化すれば、日本株相場の最高値奪回の可能性は遠のくことになる。

日本銀行による国債買い入れの縮小で需給悪化懸念が広がる中、20年債入札の不調も重なり超長期中心に金利上昇が加速。新発30年債利回りは21日に一時3.185%と過去最高を更新した。東証株価指数(TOPIX)の12カ月先配当利回りと30年債利回りを比べたイールドスプレッドは2010年3月以来、約15年ぶりの水準に達し、債券が割安な状況となった。
27日の債券市場では、財務省が市場関係者へのアンケートを実施していることが複数の関係者情報で明らかになり、国債買い入れの減額観測から超長期債利回りは軒並み急低下。しかし、ボラティリティーが上昇する中、日本銀行の追加利上げ観測もくすぶり、金利が高止まるリスクはなお消えていない。28日は40年債入札も控えている。
償還までの年限が長い超長期債は価格や金利が変動しやすいデュレーションリスクが高く、生命保険会社など主要投資家の多くは今年度の運用計画で慎重な投資姿勢を維持していることが、根強い需給懸念の背景にある。
日米の通商交渉を巡る不確実性や外国為替市場の円高進行リスクなど、日本株の上昇を妨げる材料は多く、イールドスプレッドの落ち込みは株式にとって新たな逆風だ。TOPIXはトランプ米政権が上乗せ関税を発表する前の水準を回復したものの、昨年7月の過去最高水準を依然として大きく下回っている。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは「イールドスプレッドの観点では、超長期債の方が株よりもヒストリカルに見て投資妙味が出てきている」と指摘。タイミングは見計らう必要はあるものの、将来的に円債を買い、株式を売る動きが出る可能性があるとの見方を示した。

1株当たり利益を株価で割り、株価収益率(PER)の逆数である株式益利回りの観点からも、今後株式にさらなる逆風が吹く可能性がある。米関税政策に端を発する世界経済の不透明感で業績見通しが悪化しており、益回りが低下しかねないためだ。大和証券のまとめでは、主要上場企業の25年度の経常利益は前年度比6%減が予想されている。
大和証の阿部健児チーフストラテジストは、金利上昇(債券価格は下落)の継続局面では金融株への投資が有効とみるほか、株式の下落も重なる金融市場にとって厳しい局面では景気変動の影響を受けにくいディフェンシブセクターが恩恵を受けるとみている。
--取材協力:グラス美亜、Masaki Kondo.
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