(ブルームバーグ):米投資ファンドのカーライル・グループは6年前に買収した飲料メーカー、オリオンビール(沖縄県豊見城市)の年内上場に向け動き出した。インフレに直面する消費者やノンアルコール飲料など需要の多様化で足元のビール販売は厳しい状況にあり、業界の成長性に対する投資家の見方を測る一つの試金石になる。
国内経済を見ると、デフレに長年慣れ切った日本の家計は食料・飲料品の高騰に直面している。例えばコメ価格は3月に前年同月比92%上昇し、上昇率は過去50年以上で最大を更新した。農林水産相がコメを巡る発言で辞任するなど政局にも発展し、参議院選挙を控えた石破政権は厳しい課題を突きつけられている。

ビールの販売もメーカー各社が4月に値上げしたことで駆け込み需要の反動に苦しんだ。大手の動向を見ると、4月のビール類売上金額はアサヒグループホールディングスで前年比33%減、キリンホールディングスは同31%減少した。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストであるエイダ・リー氏らは、食品価格の高騰を背景に消費者のコスト意識が高まる中、当面は需要低迷に見舞われる可能性が高いと予測する。
ただ、カーライルの富岡隆臣共同代表はブルームバーグとのインタビューで、オリオンビールは国内の消費者を対象にしており、グローバルな貿易問題の影響は受けにくいと指摘。年内の新規株式公開(IPO)目指していく構えだ。ビール業界を取り巻く環境は厳しいものの、オリオンビールに根強いファンがいることもIPO成功への希望となるかもしれない。
自身もオリオンビールを愛飲すると話すアイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは「味の違いに賛同する酔っ払いはいる」とし、味への訴求をすることで価格転嫁は受け入れられやすいとの見方を示す。同社のIPOは「バリュエーションがある程度の許容範囲であれば買ってみてもいい」と述べた。
--取材協力:Jon Herskovitz、エディ・ダン.
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