(ブルームバーグ):日本銀行の植田和男総裁は27日、経済・物価の中心的な見通しが実現していけば、2%の物価安定目標の持続的な達成に向けて利上げを継続するとの見解を示した。日銀本店で開かれた国際コンファランスであいさつした。
総裁は、基調的な物価上昇率が2027年度までの見通し期間の後半に「2%に徐々に収束していくと見込んでいる」と指摘。見通しが実現していくとすれば、物価2%の持続的達成へ「経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と語った。中心的な見通しを巡るリスクは上下両方向に大きいとも述べた。

トランプ関税による内外経済の減速懸念の強まりを踏まえ、日銀は1日の金融政策決定会合で政策維持を決めた。植田総裁は通商政策などの不確実性が極めて高く、見通しが実現していくか予断を持たずに判断していくとも述べたが、改めて現行のシナリオの下で利上げ路線を堅持していく姿勢を示した。
植田総裁の発言後、東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=142円12銭まで上昇している。直前は142円50銭付近で推移していた。
物価の基調
総裁は、政策判断で重視する基調的な物価上昇率が2%を下回る一方、生活に身近な食料品やエネルギーを含む消費者物価の総合指数が3年以上にわたり2%を上回っていることによるコミュニケーションの難しさに言及。両者の大きなかい離の長期化は特に問題だとの認識を示すとともに、「食料品価格の上昇が基調的な物価上昇率に与え得る影響に注意する必要がある」と語った。
基調的物価を評価する上で重要な予想物価上昇率は1.5%から2%の間にあると分析。これまでの金融緩和によって、「予想物価上昇率をゼロから引き上げることには成功したが、2%にアンカーされているという状況にはまだ至っていない」とし、現在も緩和的な政策スタンスを維持し続けていると説明した。
国際コンファランスは日銀金融研究所が1983年以来、ほぼ毎年開催しており、著名な経済学者や中央銀行関係者を招いて金融政策などについて議論を行う。今年のテーマは「金融政策の新たな課題」で、28日までの2日間にわたって開かれる。
(発言の詳細を追加して更新しました)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.