(ブルームバーグ):欧州連合(EU)は米国との貿易戦争を回避するため、交渉を加速させることで合意したと明らかにした。欧州委員会のピーニョ報道官は「交渉に新たな弾みがついた」と26日、記者団に話した。「双方とも交渉を迅速化し、緊密に連絡を取り合うことで合意した」と述べた。
これまでの交渉は難航しており、EU側は「米国の要求が不明確で、誰が代表なのかも分かりにくい」と不満を示し、米国側は「EUが米企業を訴訟や規制の標的にしている」と批判してきた。

金融市場ではアジア株と同様、欧州株と米株式先物が堅調に推移。ドル指数はアジア時間に2023年12月以来の安値に下げた後は、下げ幅を縮小している。
シェフチョビッチ欧州委員(貿易・経済安全保障担当)は26日に行われたラトニック米商務長官、グリア米通商代表部(USTR)代表との電話会談について「有意義な話し合いができた」と評価した。
シェフチョビッチ氏はソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」への投稿で、欧州委員会は合意成立に向けたペースで「建設的かつ的を絞って取り組むことに対して、なおも100%コミットしている」と述べた。双方は引き続き「緊密に連絡を取り合う」という。
ブルームバーグ・エコノミクスの試算によれば、EUへの50%関税が発動されれば3210億ドル(約45兆8300億円)相当の財貿易に影響し、米国内総生産(GDP)を0.6%近く押し下げ、物価を0.3%余り押し上げる可能性がある。
米国は先週、EUから提示された当初案を拒否。ブルームバーグの報道によれば、これには工業製品関税の相互撤廃と、一部の米農産物に対する市場開放、人工知能(AI)データセンターの共同開発が含まれていた。

EUは交渉による解決を優先するとしつつ、報復措置も準備。既に239億ドル相当の米国産品への関税を承認しており、ジョンソン下院議長の選挙区であるルイジアナ州の大豆など、政治的な影響力が大きい品目を標的にしている。また950億ユーロ(約15兆4400億円)規模の追加関税リストも用意しており、ボーイングの航空機や米国製自動車、バーボンなどが含まれる。
ドイツのライヒ経済相は双方とも交渉前に冷静さを取り戻す必要があると指摘する。関税は米国にも打撃を与えることを米国は理解する必要があると述べ「解決策を見いだすまでにまだ6週間ある」と話した。
原題:EU Plans to ‘Fast Track’ Trade Talks With US Amid Tariff Fight(抜粋)
原題:EU Trade Chief Touts ‘Good Calls’ With Lutnick, Greer(抜粋)
(第4段落にシェフチョビッチ欧州委員とラトニック米商務長官らとの電話会談について追記します)
--取材協力:Michal Kubala、Jenni Thier.
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