セブン&アイ・ホールディングスが27日に開いた株主総会で、スティーブン・デイカス社長らの取締役人事が承認された。波乱はなかったものの、カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから受けた買収提案に関しては説明が不十分だとの声が株主から上がった。

昨年7月にクシュタールから買収提案を受けてから株主と直接対話するのは初めてとあって、前回の倍以上となる約800人が参加。1時間強にわたった質疑応答では、買収提案への対応や業績不振など、今後の不透明な展開について説明を求める株主が相次いだ。

スティーブン・デイカス社長

井阪隆一前社長はクシュタールとの現状について、秘密保持契約(NDA)に留意しながら引き続き株主に情報発信していくと述べた。また、株主や全てのステークホルダーの価値最大化を目指し、自社による成長と株主提案を比較・検討していくと説明した。

買収提案を巡っては、創業家が中心となって経営陣が参加する買収(MBO)を計画して事実上の防衛を試みたものの資金調達に失敗した。今後も経営陣による非上場化を目指す可能性があるかどうかについて繰り返し問われたが井阪氏は明確に答えず、会場からは「創業家の取締役もいるじゃないか」との声も上がった。これに対してセブンの取締役として参加しているため対応することはできないと説明し、創業家の伊藤順朗会長は沈黙を貫いた。

今年の株主総会は事前に物言う株主(アクティビスト)からの提案がなく、米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)やグラス・ルイスが人事案に賛成した。新体制は大方の予想通り承認されたが、株主の疑問が解消されたとは言いづらい。

業績が振るわない中で、取締役の報酬上限額を引き上げる議案への受け止めを問いただす場面もあった。井阪氏は2025年2月期の業績について「不甲斐ない」と述べ、前上期の急激なインフレで消費が減退したことを理由に挙げた。報酬は業績に連動しており、おおむね3割程度減額になると説明した。

一方、デイカス氏の社長就任については、選任プロセスを疑問視する声が上がった。これ対して井阪氏は、グローバルな事業展開をする上で必要な人材を選ぶため、3桁に近い対象者をスクリーニングして指名委員会が議論した結果だと説明した。

デイカス氏はコンビニ事業の海外展開強化や国際的な供給網の効率化に注力する意向で、夏ごろには新たな経営計画をまとめるとしている。3月の社長交代発表時には、総額2兆円の自社株買いや北米事業の新規株式公開(IPO)などを打ち出した。

今後の成長戦略を市場が評価し、株価が伸びなければ、独立路線を選択することは難しくなる。デイカス氏はセブンに「骨を埋めるつもりはあるか」と覚悟を問われ、自身も小売りの現場を経験したと説明した上で「お客様第一で、株主もお客様に含まれる」と株主に配慮する姿勢を示した。

9年間務めた井阪氏は株主総会を最後に退任となった。株主総会の閉会後に感謝の言葉を述べ、拍手の中で涙ぐむ一幕もあった。

(総会の内容を追加しました)

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