国内大手生命保険会社4社が保有する国内債券の3月末時点で含み損の合計が8兆5450億円と1年前と比べて4.2倍に拡大したことが26日、分かった。

同日までに出そろった2025年3月期(前期)決算で明らかになった。同日決算を発表した明治安田生命保険の含み損は1兆3858億円と1年前と比べて約8.6倍に、住友生命保険は1兆5185億円と同3.8倍に膨らんだ。日本生命保険は約3兆6000億円、第一生命保険も約2兆円へと拡大している。

 

生保は一般的に債券を満期保有で保持している。ただ、債券の時価が帳簿価格よりも50%以上下落した場合は、減損処理実施の可能性が生じる。また、大幅な金利上昇に伴う想定外の保険解約があった際には、含み損を抱えた債券の売却による現金化を迫られるなど損失計上につながる可能性もある。含み損の拡大は運用資産の配分でリスクを取りにくくする要因にもなる。

含み損の拡大に関して明治安田の中村篤志副社長は会見で、今期末から適用される新たな資本規制では、負債として抱える保険契約も資産と同様に時価評価するため、保険金の支払い余力を示す指標となる経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)への影響は「軽微だ」と述べた。一方、市場のボラティリティーの高まりを受け、健全性確保を目的にヘッジを見込んでおり、同コストの増加を見込むと語った。

同社で運用企画部長を務める北村乾一郎執行役員は「まだ減損への距離はある」とした上で、「超長期金利の急上昇がこのまま続くとは思っていない」との認識を示した。

超長期金利は4月以降上昇ピッチを強めており、30年と40年国債の利回りは今月過去最高を更新した。含み損がさらに拡大する可能性もある。各社は低利回りの国債を売却して、高利回りの国債を購入するといった入れ替えを進めており、前期決算では売却損も拡大した。

住友生命の髙尾延治常務は「超長期金利はすでに大きく上昇している状況で、さらに大幅に上昇する可能性が高いとは考えていない」と指摘。「含み損は拡大しているが債券は持ち切りを前提としているので、それほど深刻に捉えてはいない」と語った。

一方、本業のもうけを示す前期のグループ基礎利益は、日本生命が前の期比32%増の1兆109億円、第一生命ホールディングスが同22%増の6388億円、明治安田は同12%増の6264億円、住友生命が同24%増の3798億円と全社が最高益を更新した。外国債券投資からの受取利息が円安影響によって拡大したほか、株式配当金の増加など資産運用が好調だった。

今期のグループ基礎利益は、先行き不透明な経済環境が利益の押し下げ要因になるなどとして、日本生命を除いた3社が減益を見込む。

 

(グループ基礎利益に関する記述を追加して記事を更新します)

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