また、同日に行われたドゥダ大統領の任期満了に伴うポーランドの大統領選挙の出口調査によれば、2023年の議会選挙で政権を奪還した親EU会派「市民連立(KO)」のチャスコフスキ・ワルシャワ市長が30.8%の得票率で首位に、前政権を率いたEU懐疑主義の右派ナショナリスト政党「法と正義(PiS)」のナブロツキ候補が29.1%で続き、6月1日に行われる決選投票に進出した模様。ポーランドの大統領選挙は二回投票制で行われ、初回投票で過半数の支持を獲得した候補がいた場合、その候補が大統領に選ばれ、過半数の支持を獲得した候補がいなかった場合、上位2名による決選投票が行われ、その勝者が大統領に選出される。

ポーランドでは首相が政権運営を担うが、大統領は首相の指名・任命権、法案の拒否権、条約の批准権、軍の最高司令権などを持つ。2015年から2期10年を務めたドゥダ現大統領は、法と正義出身の元政治家で、政権寄りの姿勢が目立った。カチンスキ―元首相が率いる法と正義は、EU法の優越を否定する司法制度改革、EU内の難民受け入れ分担の拒否、マイノリティの人権軽視などを巡って、EUとの対立を繰り返してきた。欧州理事会の常任議長(いわゆるEU大統領)を務めたトゥスク氏の中道右派政党「市民プラットフォーム(PO)」が中心となり、2013年に親EU会派が政権を奪還した後も、大規模な政策転換の障害となっていた。両者が対峙する決選投票の世論調査は、全ての調査でチャスコフスキ候補が逃げ切ることが予想されている。このままチャスコフスキ候補が大統領の座を掴めば、ポーランドの親EU路線への転換がより確実なものとなる。

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト(グローバルヘッド) 田中理)