(ブルームバーグ):中国の工業生産は4月に予想を上回る伸びを示したが、小売売上高は伸び悩んだ。米国との貿易対立は早期に和らいだものの、世界2位の規模を誇る中国経済の課題が浮き彫りとなった。
国家統計局が19日発表した4月の工業生産は前年同月比6.1%増。ブルームバーグ調査の予想中央値は5.7%増加だった。3月は7.7%増えていた。4月の小売売上高は前年同月比5.1%増加。予想は5.8%増だった。3月は5.9%増加していた。
1-4月の固定資産投資は前年同期比4%増。4.2%増加と見込まれていた。

4月の工業生産が底堅く推移する一方、エコノミストらが関税措置を巡る90日間の停止を受けた過度な楽観論に警鐘を鳴らす中、今回の消費の弱さは支援策強化の必要性を示唆している。長引く不動産危機やデフレ圧力、失業不安が家計心理を圧迫している。
中国政府は2025年の国内総生産(GDP)成長率目標を5%前後と、野心的な水準に設定。今年は国内消費の拡大を優先課題としている。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の大中華圏担当チーフエコノミスト、楊宇霆氏は「堅調な工業生産は中国経済の一部を反映しているに過ぎない」と指摘。「4月の小売売上高は消費者が支出に消極的であることを示している。5%成長を実現するには消費回復が必要だ」と指摘した。

今回の経済データは米国との貿易摩擦が一気に激しくなった4月の中国経済の動向を最も包括的に示している。米中は今月に入り、関税戦争の90日間休戦で一致したが、最終合意に向けた今後の交渉を巡る不透明感は拭えず、生産拡大や新規投資に対する企業の慎重姿勢は続く可能性もある。
だが、4月の予想を上回る工業生産の伸びは、トランプ米政権下で始まった貿易戦争の初期段階で中国が急激な景気減速を回避できたことを示している。4月の輸出も予想を上回り、対米輸出の急減を補う形で東南アジアや欧州市場への出荷を拡大した。
不動産不況に加え、貿易戦争によって製造業や輸出産業がレイオフを余儀なくされるのではないかとの懸念を背景に、消費者マインドはなお脆弱(ぜいじゃく)なままとなっている。
4月は政府による消費財買い替えの補助金政策が家電製品や通信機器、家具などの販売増に寄与したとみられる。一方、小売売上高全体の10%近くを占める自動車購入は3月の5.5%増から鈍化し、1%未満の伸びにとどまった。
ING銀行の大中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏は「買い替え政策などの措置は短期的な消費の安定に効果があるものの、持続的な消費回復には消費者心理の改善が必要である可能性が示されている」と分析。心理が上向くには「資産価格の安定化と賃金の回復が求められる」と述べた。

原題:China Consumption Miss Overshadows Factory Strength Amid Tariffs(抜粋)
(市場関係者のコメントなどを追加し更新します)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.