(ブルームバーグ):関税の経済的悪影響を抑えようとする中国政府の取り組みを、Z世代の若者たちが支えている。助けになるのは、趣味など好きなことには大金を費やすことをいとわない彼らの消費行動だ。
アナリストらが「感情的な消費」と呼ぶこうした行動は、中国経済が全般的に低迷し続ける中で際立っている。
玩具メーカーの泡泡瑪特国際集団(ポップマート・インターナショナル・グループ)や宝飾品の老舗黄金、ドリンクチェーンの蜜雪氷城など、Z世代に人気の企業は売り上げが急増し、株価も急伸。
こうした若者たちの消費は、米国との貿易摩擦で輸出主導型の成長モデルが脅かされている世界2位の経済大国にとって、一筋の光明となっている。
中国政府は経済成長モデルの再定義を試みており、消費促進と内需拡大を最優先事項としている。こうした動きは、本土の株式市場で投資家が大きな利益を狙える状況を浮き彫りにする。
同市場では最近、米中関税合戦を背景に売り圧力が増す場面があったものの、両国は言わば一時停戦で合意し、本土株は再び上昇軌道に乗る可能性がある。Z世代の消費に関連する銘柄は先に、大きく上昇していた。

中国で1995-2010年生まれを指す2億5000万人以上のZ世代は、日常的に消費する食品などへの出費を倹約する一方で、趣味には惜しみなく資金を投じ、玩具や有名人のグッズ、流行の宝飾品に数百ドル、時には数千ドルを費やす。
こうした消費傾向は米国のZ世代と大きく変わらない。彼らはオンライン重視で、親世代よりもアルコールを控え、低価格の商品を探す。不動産購入には後ろ向きで、親たちには理解できないようなニッチなブランドや趣味に熱中する。

深圳市君茂投資の李守強ファンドマネジャーはZ世代について、「自分中心で趣味に没頭、価格にそれほど敏感でなく、感情に訴えたり感覚的な喜びを提供するものにお金を使う」と指摘。その消費対象は「本質的に、上の世代が無駄と考えるもの全てだ」と話した。
電子商取引会社で働く26歳のリウ・メイシュアンさんが典型かもしれない。四川茶姬の安いドリンクをクーポンを使ってさらに安く購入する一方、韓国のポップスターをフィーチャーしたトレーディングカードには最大9600ドル(約140万円)を費やしたと振り返る。
中国は米関税に対応するだけでなく、長年の不動産不況からの回復途上にあり、デフレとも闘っている。Z世代の消費だけでは、経済の立て直しに不十分だ。 また、この世代特有の消費パターンは、投資家が勝ち組を見極めるのを難しくしている。
泡泡瑪特や布魯可集団は玩具を製造。蜜雪氷城や古茗控股はお茶などのドリンク類を販売している。伝統的な中国のデザインを提供する宝飾品ブランドの老舗黄金はSNSで話題となり、Z世代に注目された。
この5銘柄は今年、倍以上に値上がり。セレブのメーキャップアーティストの創業者がZ世代の支持を得ている毛戈平化粧品の株価は約80%上昇している。ドリンク販売を手がけ香港に上場したばかりの滬上阿姨(上海)実業も上げている。
上海のコンサルティング会社チャイナ・スキニーのマネジングディレクター、マーク・タナー氏は「これらの企業は明らかに時流を読み取り、トレンドに適応している。こうした傾向は今後も続く可能性が高い」と話した。
原題:Gen Z’s ‘Emotional Consumption’ Fuels Wild Stock Moves in China(抜粋)
--取材協力:Lulu Shen、Qingqi She.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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