丸紅の大本晶之社長は13日、事業売却益など一過性の損益を除く「実態純利益」を2031年3月期までに8000億円超に引き上げる狙いを明らかにした。同期に時価総額10兆円超とする目標に向けて必要となる水準とする。

8000億円超は現状の2倍弱にあたる。これに伴って株価収益率(PER)も12倍超に視野に引き上げる。市場に成長実績を示し、株主還元も進めて時価総額を高める。10兆円は伊藤忠商事や三菱商事に次ぐ規模だ。4月に就任した大本氏は、インタビューで過去6年間の利益成長や時価総額が4倍になったことを挙げ、「過去の実績からすると変な数字ではない」と述べた。

丸紅の大本社長(13日・都内)

丸紅の純利益は20年3月期の大幅赤字から回復したものの、新型コロナウイルス禍が収束した後は5000億円前後で足踏みしている。新体制の下で、農業資材や再生可能エネルギー関連など非資源領域の拡大を通じて、利益成長を図る。足元で原料炭や鉄鋼価格が低迷する中、非資源分野は安定して収益を拡大していることが背景にある。

勝ち筋を追求

2月公表の中期経営計画では、28年3月期までに投下資本利益率(ROIC)を非資源全体で現在の7%から10%まで引き上げるとした。戦略策定には、大本氏が次世代事業開発部門の本部長を務めた経験をいかしたという。本部長時代に過去の成功事例をひもとく中で、市場の成長・高付加価値・周辺事業に裾野を広げやすいという共通点を発見。「勝ち筋」である3要素を備える事業に積極的に投資する考えだ。

一方、利益が出ていても今後の成長が見込みづらい分野は事業売却し、成長投資や配当原資に充てる。投資の回収は28年3月期までに6000億円、今期は2300億円を見込む。

投資回収の判断基準として重視するのは成長性だ。「過去6年くらいの数字を取って、ずっと横ばいのものある」とし、見直しの余地が特に大きい領域としてインフラ事業を挙げた。継続的に利益は出るものの、さらなる成長性が望みづらいという。

トランプ関税を注視

米トランプ政権による追加関税の影響については、「ニュートラルもしくはわずかにポジティブ」との見解を示した。総合商社のビジネスは貿易より事業投資の色合いが濃くなっており、同社事業の中で関税の影響を直接受けるのは純利益の10%未満と小さい。

一方、高関税で価格が上がれば中古市場に注目が高まり、中古自動車向け金融や航空機エンジン事業などの内需型事業に追い風になる可能性がある。同社は、関税による物価高騰で消費意欲が冷え込むなどの影響への備えとして、今期利益見通しをあらかじめ300億円引き下げた。

トランプ政権が訴える液化天然ガス(LNG)の日本への輸入拡大は、長距離のパイプライン敷設などの投資に見合う利益が見込めるかが焦点だ。大本氏はこの点について「コスト競争力があるものについては当然是々非々で見ていく」と述べるにとどめた。

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