(ブルームバーグ):アジアの富裕層の一部が米資産へのエクスポージャーを減らしている。トランプ米大統領の関税政策で米経済の先行きがはるかに予測しにくくなったと指摘している。
中国系億万長者の資産を運用するあるファミリーオフィスは、米資産を全て売却した。それによって得た資金はアジアに移す意向だ。欧州最大級のプライベートバンクの幹部は、世界中の富裕層や機関投資家による最近の米資産売却の規模は過去30年に例のない規模で、より持続的な資産売却の始まりとなる可能性があると指摘した。
アジアの大手銀行幹部は、現金と金を保有する方が安全だとして、自身のポートフォリオ中の米資産の60%を売却した。
数十億ドル規模の資産を運用する超富裕層向けファミリーオフィスやアドバイザー約10社がブルームバーグ・ニュースに対し、主に米国株と米国債への投資を削減、または凍結していると明らかにした。その理由として政策の急激な転換、不確実性、景気後退リスクを挙げている。一部投資家は匿名を条件に語った。
香港を本拠とするインフィニティ・ファミリー・オフィスのヘンリー・ハウ最高経営責任者(CEO)はインタビューで「一部の富裕層一族が初めて米資産からの部分的な撤退を検討している」と語った。「これらのファミリーは、ドットコムバブル、アジア通貨危機、そして2008年の世界金融危機を乗り越え、米資産への信頼を維持してきた。しかし現在は、米資産ポートフォリオの20-30%を中国と欧州に再配分することを検討している」という。

アジアのビジネスエリートの多くがトランプ氏の大統領選勝利を歓迎した当時とは状況が一変している。わずか数カ月前には銀行や大手テクノロジー企業の株価が過去最高値に達していたが、現在は大きく様変わりしている。
一方、近年不動産危機の余波に見舞われてきた香港と中国本土は、米国と欧州株からの資金流出の恩恵を受けている。多くの中国企業が上場している香港の主要株価指数は今年13%余り上昇しているのに対し、米株のS&P500種株価指数は約4%下落している。
香港の法律事務所、中倫律師事務所で超富裕層にアドバイスするマネジングパートナー、クリフォード・ウン氏は「他の地域のビジネス界と同様に、中国のビジネス界の多くは、反貿易タカ派のトランプ氏ではなく、取引の仲介役としてのトランプ氏を期待していた」と指摘。「富裕層顧客は、米資産を縮小し、世界的な資本配分を見直している」と述べた。

原題:Asia’s Super-Rich Rapidly Dial Back US Exposure on Trade War (1)(抜粋)
--取材協力:Denise Wee、Lulu Yilun Chen、Tassia Sipahutar.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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