牧野フライス製作所株が東京市場で一時前日比21%安の8790円と、ブルームバーグの記録に残る1974年9月以来の日中下落率を付けた。ニデックが8日、牧野フに対する株式公開買い付け(TOB)の撤回を発表した。

ニデックは前日、牧野フによる対抗措置が実施された場合、自社に損害を生じさせる恐れがあり、TOBの維持が経済合理性を欠くことになりかねないと判断した。同社は対抗措置の差し止めを求めて仮処分を申し立てたが、7日付で東京地方裁判所が却下していた。

牧野フライスのロゴ

今後焦点になるのはホワイトナイト候補との買収協議だ。牧野フの宮崎正太郎社長は4月、ホワイトナイト候補から初期的な提案も受けていると説明。よりよい条件での買収の可能性がある以上、確認のために動くことが公正につながるとして、ニデックにTOB開始時期を遅らせるよう求めていた。

牧野フは9日の発表で、初期的な意向表明書を提出した第三者との間で、法的拘束力のある最終的な意向表明書の受領に向けてデュー・デリジェンス(資産査定)への対応と協議などを行っていると明らかにした。

SMBC日興証券の谷中聡アナリストは8日付のリポートで、仮にホワイトナイトとの協議も白紙となった場合は、牧野フ株価に対する買収プレミアムがはく落するリスクが高いと指摘した。同証券の目標株価は9700円。

一方、岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは、ニデックの結論について、「撤退は正しい判断だ」との見方を示す。仮に買収が成立しても、牧野フが不信感を抱いていた状況を考慮すると、その後の統合がスムーズに行かない可能性があると説明する。

ニデックは買い付け価格として1万1000円を提示していた。TOB不成立は、同社の買収戦略の転換点になる可能性があるが、株価が急落した牧野フにはとっては、株主が納得する企業価値向上策を早急に明示することが求められる。

(アナリストコメントなどを追加しました)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.