フィリピン軍は、南シナ海で領有権を争う中国の軍艦がフィリピンの艦艇の近くを横切るように航行し、衝突の危険を生じさせたとして、映像を公開しました。両国の軍艦が接近するのは、異例の事態とみられます。

フィリピン軍が中国と領有権を争う南シナ海のスカボロー礁付近で、今月5日に撮影した映像です。

フィリピン側の発表によりますと、中国海軍のフリゲート艦1隻がフィリピン艦艇の船首を横切るように航行。衝突の危険が生じたため、無線で警告したということです。また、別の中国の軍艦1隻がフィリピン艦艇を至近距離で追尾したとしています。

フィリピン軍は中国側の威圧的な行動が緊張を高めるとして、深刻な懸念を表明しました。

南シナ海ではこれまでに、海上警備を担う両国の船舶が衝突するなどの事案が繰り返されてきましたが、両国の軍艦が接近した今回の事態は異例とみられます。

同じ今月5日には、南シナ海の近くの海域で、フィリピン軍とアメリカ軍による合同軍事演習が予定されていて、中国側にはこうした活動をけん制する狙いがあった可能性もあります。

一方、中国軍南部戦区の報道官は8日に談話を発表し、フィリピンの軍艦に対し、「法に基づいて追跡や監視、警告を行い、中国の領海に入るのを阻止した」と主張しました。

また、「フィリピン側の発言は事実を無視し、国際的な認識を欺こうとした」として、中国側の「国家主権と安全保障、海洋権益を断固として守る」と強調しています。