(ブルームバーグ):トランプ米大統領は8日に記者会見を開き、英国との貿易合意を発表する見通しだ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。限定的な合意内容になるとみられているが、トランプ氏が仕掛ける貿易戦争の方向性を示唆する可能性がある。
トランプ氏は7日夜、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「非常に尊敬を集めている大国の代表との主要な貿易合意」について説明するため、ワシントン時間8日午前10時(日本時間同午後11時)に大統領執務室で記者会見を開くと投稿していた。
8日の投稿では、トランプ氏は英国との合意は「完全かつ包括的」と述べ、「これ以外にも多くの」取引が「重要な交渉」に入っており、順次続いていくとも述べた。
詳細は現時点では不明だが、両国の当局者は今週、自動車と鉄鋼の関税引き下げ案について協議を行ってきた。
スターマー英首相は8日、ロンドンで行われた第2次大戦終結80周年にあたっての演説で、同日中に対米協議に関する新たな情報が明らかになると述べた。また英当局者の1人は、トランプ氏の発表が英国との合意に関するものであることを示唆した。
スターマー氏は「私は常に労働者や企業、家庭の利益を最優先に、安全保障と再生を実現するために行動する」と述べた上で、米国を「英国の経済と安全保障にとって不可欠な存在」と位置付けた。

協議はテクノロジーや人工知能(AI)などいくつかの分野に絞られた。スターマー政権は関税引き下げを求めており、特に英自動車と鉄鋼に課せられている25%が焦点となっている。また米国が製薬業界への調査を進める中、英国は主な輸出品の一つである医薬品への関税導入の可能性も回避したいと考えている。
米国の世論が経済運営への不満を強める中で、トランプ政権は高関税政策を巡り出口を探るよう政治的な圧力に直面している。トランプ大統領は今回の合意が「数多くのうちの第一弾」になると示唆した。米国の輸出に対する障壁を取り除き、自身の関税政策の広範な影響で揺れる市場の混乱を抑えることを目指す。
だが、いかなる合意にも重要なただし書きが加わる可能性がある。本格的な貿易協定の交渉には通常数年を要する。複数の国と進めている協議も、あくまで大枠の合意にとどまり、包括的な協定に本来盛り込まれる詳細はその後詰めることになるかもしれない。
想定されている貿易合意に関して、関与する国や規模についてホワイトハウスにコメントを求めたが、まだ返答は得られていない。ワシントンにある英大使館もコメント要請にはこれまでのところ応じていない。英国との貿易合意の発表見通しについては、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が先に報じていた。
枠組み合意
トランプ大統領は受け入れ可能な貿易合意の概要に関してほとんど明かさないが、初期段階の発表は今後の本格交渉への枠組みとしての役割を果たす公算が大きいと、側近らは指摘してきた。
何らかの発表があれば、市場を支える材料となる公算は大きいが、先月2日に打ち出された大規模な関税をトランプ政権がどの程度後退させる用意があるのか、投資家は注視している。
ウィリー・レインの通商弁護士、ティム・ブライトビル氏は「今回の発表はあくまで交渉を開始するための合意であり、今後数カ月で議論される問題の枠組みを確認するものになるとみられる」と指摘。「われわれは関税率や非関税障壁、デジタル貿易がリストに挙げられていると考えているが、いずれも対処が困難な問題だ」と述べた。
原題:Trump Teases ‘Major’ Trade Announcement, Expected to Be UK Deal
Trump Expected to Unveil US-UK Trade Pact After Tariff Talks (2)
Trump Says Deal With the UK Is ‘Full and Comprehensive’
(抜粋)
(第3段落を加えます)
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