(ブルームバーグ):電気自動車(EV)メーカー米テスラのロビン・デンホルム会長は昨年11月中旬以降、事前に定められた計画に基づき定期的に同社株を売却している。
デンホルム氏は計画に沿って、昨年11月15日に3500万ドル(約50億9000万円)相当のテスラ株を売却。以降、12月2日、今年2月3日、3月3日、4月29日にも同じ株数を売却した。
ブルームバーグのデータによると、同氏は2020年以降、計5億5800万ドル相当のテスラ株を売却。現在の取締役による売却総額約12億ドルのほぼ半分に相当する。

売却計画はストックオプションの行使に伴うもので、ここ数年間にテスラが築き上げた莫大な富の象徴だ。テスラ最高経営責任者(CEO)で世界一の富豪であるイーロン・マスク氏が最も大きな恩恵を受けたが、同氏の親族や友人が多くを占める取締役もまたその恩恵を受けた形だ。
マスク氏自身も認めるようにテスラは現在重大な岐路に立たされている。株価は昨年12月の高値から41%下落。マスク氏のトランプ米大統領との関係性が強調される中で、テスラの車や販売店、充電設備が一部で政治的攻撃の的となっている。
マスク氏は米政府への関与から身を引きつつあるが、16億ドル以上のテスラ株・オプションを保有する現取締役たちは厳しい視線にさらされている。
テスラの取締役会にはマスク氏の関係者が多く含まれており、その独立性には長年疑問の声が上がっている。マスク氏に付与された550億ドル規模の報酬パッケージが昨年、裁判所で却下された際、判事はこれを承認した取締役会の姿勢を批判した。
現在の取締役には、ベンチャーキャピタリストのアイラ・エーレンプレイス氏、エアビーアンドビー共同創業者のジョー・ゲビア氏、テスラ共同創業者のJB・ストローベル氏、マスク氏の弟キンバル氏などが名を連ねる。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、テスラ取締役会がCEO後任探しに向けて人材紹介会社に接触したと報じたが、デンホルム氏はこれを否定。「マスク氏が引き続き事業を遂行する能力に強い自信を持っている」と述べた。
マスク氏、デンホルム氏、テスラ広報はいずれも取材に応じていない。
ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダン・アイブス氏は「テスラはCEO交代を検討しているという報道を否定したが、報道は取締役会の監督責任を再確認させるもので、マスク氏に対する警告としての意味合いもある」と述べた。
原題:Tesla Board in Spotlight After Cashing In $1.2 Billion With Musk(抜粋)
--取材協力:Dana Hull.
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