中国は、トランプ米大統領との取引を目指す各国に対し、米国はいじめをする信頼できない国だというメッセージを発している。トランプ氏が上乗せ関税を巡り中国を除く国・地域に与えた90日の発動停止期間内に各国政府を米国から離反させることが狙いだ。

ベッセント米財務長官は、貿易協定が成立した場合、同盟国に「グループとして中国にアプローチする」ことを求め、交渉力を高める構想を示している。

韓国や欧州連合(EU)など米国の同盟側は、安全保障面で米国に依存し、経済的にトランプ政権に譲歩する動機を持つが、中国はより対等な立場で関税戦争に臨んでいる。中国は第1次トランプ政権時の貿易戦争以来、対米輸出への依存を減らすよう取り組んできた。

貿易関係の現状について話すトランプ氏

中国の習近平国家主席は関税を巡るトランプ氏との電話会談を拒んでおり、中国は一方的な関税措置の撤回を要求。一方、米国側は緊張緩和に向けた一歩を先に踏み出すよう中国に求めている。

そうした中で中国はルールに基づく秩序の擁護者と自らを位置付け、共に米国に立ち向かうよう他国に促している。復旦大学米国研究センターの呉心伯主任は、「これは単なる米中間の問題ではない。国際貿易と経済システムに関わる問題だ」と語る。

中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁は先週、米国が他国の正当な権利と利益を「著しく侵害した」と主張した。

また、中国の王毅外相は28日、主要新興国グループ「BRICS」の外相会合で、対米融和姿勢を取れば、いじめをする「乱暴者」をつけあがらせるだけだとし、トランプ氏の要求に抵抗するよう各国に呼びかけた。

その数時間後、中国外務省は英語字幕付きの動画で、米国を「帝国主義的」な大国だと非難。米国は20世紀に日本の輸出を制限し、東芝などの企業に深刻な打撃を与えたと指摘した。

威圧的行動

トランプ氏の関税政策を巡り、EUなど多くの貿易パートナーは反対を示しているが、中国に接近することにも慎重な姿勢を見せている。

台湾周辺や南シナ海での中国の軍事的な威圧行動は域内での警戒感を高めており、ウクライナ侵攻後にロシアのプーチン大統領を支える習氏の姿勢は、欧州で強い反発を招いている。

トランプ氏は関税を巡り市場を混乱させた

安価な中国の製品が米国から大量に自国市場に流れてくるとの懸念も各国の間で強まっている。ただ重要鉱物やその他製品を中国に依存する米国の同盟国にとって、貿易戦争を巡る解決策は限られる。中国政府は各国に対し、米国との貿易協定が中国の利益を損なうものであってはならないと警告している。

ブルームバーグが関係者の話として先に伝えたところによると、トランプ政権の経済顧問らは、中国と関係の深い国からの輸入品に対し、実質的な追加制裁である「二次関税」を発動するよう他国に求める案を検討していた。

一方、中国政府はこのところ軍事関連の問題や領土紛争で対立してきた各国に対し、歩み寄りの姿勢を見せている。

共同通信は日本の政府関係者の話として、中国の李強首相は今月、石破茂首相にトランプ氏の関税措置に対し協調した対応を呼びかける親書を送ったと報道。また、日本政府関係者によれば、中国に対抗する経済圏に参加するよう求める米国の動きに対し、日本は抵抗する意向を示している。

アジアソサエティー政策研究所の中国分析センターで中国政治を担当するニール・トーマス研究員は、中国の外交攻勢によって米国のパートナーが米国を見限り中国に近づくことはないだろうと分析。

その上で、「トランプ政権が輸出管理の協調や合同軍事演習を通じて中国に対する統一戦線を築くのが、従来よりも難しくなる可能性はある」との見方を示した。

原題:Xi Is Trying to Turn World Against US as Trump Cuts Deals (1)(抜粋)

--取材協力:Nasreen Seria、Alfred Cang、Anto Antony、Ben Westcott、ジェームズ・メーガ、Yujing Liu、横山恵利香.

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