28日の日本市場では株式が続伸。主要株価指数は米上乗せ関税が発表される前の2日終値を上回って引けた。トランプ米政権の関税政策への懸念が和らいでいる上、円相場の安定が好感された。米中貿易摩擦が緩和に向かうとの期待がドルを支え、円は1ドル=143円台で推移。債券は先物や長期債が買われた。

ベッセント米財務長官は27日、ABCニュースの番組で、中国を除く主要貿易相手17カ国との関税交渉について「一部の国々、特にアジア諸国との交渉は非常に順調に進んでいる」と語った。トランプ米大統領は米中間で貿易協議が進んでいると主張している。

みずほ証券エクイティ調査部の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、足元で関税を巡る状況は落ち着いており、株式相場は一部に買い戻しの動きが見られると指摘。先週に比べて為替が円安に振れていることも支えと述べた。

一方、三浦氏は、週明けの米国市場の動向に対する警戒感は残っており、大型優良株が集まる日経平均株価の上昇は抑えられていると付け加えた。

トヨタ自動車の創業家などが豊田自動織機に対し同社の非公開化を前提とした買収提案を行ったとの25日の報道を受けて、トヨタ自動車とグループ企業の株価が上昇。豊田織株は前営業日比3000円高のストップ高となった。

株式

東京株式相場は続伸。自動車や機械など輸出関連、商社株といった海外景気敏感業種が買われ、銀行や保険など金融株も堅調に推移した。TOPIXは3月以来の5営業日連続高。

トヨタ株は一時5%以上値上がりし、TOPIXの上昇をけん引。グループ企業の豊田合成や豊田通商も上昇した。そのほか、自社株買いを25日に発表した信越化学工業が大幅高。一方、25日発表の通期営業利益計画が市場予想を下回ったアドバンテストや日東電工などは売られた。

外国為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=143円台で推移。米中貿易摩擦の緩和期待がドルを支える一方、米国の日本に対する円安是正を巡る観測を背景に円も底堅い。

ソニーフィナンシャルグループの石川久美子シニアアナリストは、ドル・円相場は142円から145円程度のレンジを想定しつつ、米中の関税交渉などの材料を一つ一つ確認する展開だと述べた。「米中が歩み寄ってくるともう一段のドル上昇もあり得る」とみる。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは「前週に材料が一巡した」とし、日本銀行の政策決定や米雇用統計などのイベントを週後半に控えている上、日本の祝日前で「方向感は出づらい」と述べた。

三村淳財務官は28日、先週米ワシントンで開催された日米財務相会談において、米国側から円高・ドル安が望ましいとの発言はなかったと語った。あおぞら銀の諸我氏は「市場では米国側は円安是正への意向が強いとの見方があり、ドルは上に行きにくい」と話す。

債券

債券相場は先物や長期債が上昇。前週末の米長期金利低下を好感した買いが優勢になった。一方、30年債や40年債など長めの超長期債は下落した。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「米国債市場が落ち着きを取り戻してきており、円債の買い安心感にもつながる」と述べた。

アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎債券ストラテジストは、超長期債の需給がまだ不安定なため、10年以下のゾーンは持ちやすさから買われていると指摘した。もっとも、連休中のヘッドラインリスクが警戒され、「連休明けまで積極的にリスクを取りづらい」との見方も示した。

先週末以降、日銀が今週の金融政策決定会合で政策金利を据え置くとの報道が続いている。三井住友アセットの稲留氏は、今回の日銀会合は「ライブではない」と指摘。経済・物価情勢の展望(展望リポート)で経済成長率見通しの引き下げが予想されていることについて、「関税の影響次第であり仮置きのような印象で、これでポジションを動かす感じではない」と述べた。

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この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:山中英典、長谷川敏郎、アリス・フレンチ.

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