(ブルームバーグ):デジタルマーケティング専門家のマイク・スキーマーさん(39)は、ウォール街のトレーダーとしての経歴はないものの、株式市場で破格の掘り出し物を目の当たりにしていると確信している。
「世界のベスト企業がバーゲン状態だ。1989年や2001年、08年、20年といった困難な時期を乗り越えてきた企業が多く、今も成長し続けている」。ボストン郊外の自宅からインタビューに応じた。
スキーマーさんと同じように考えている個人投資家は少なくない。資産運用のプロがリスク回避に走る中でも、個人投資家は米国株を積極的に買い続けている。
JPモルガン・チェースのグローバルクオンツ・デリバティブ(金融派生商品)担当ストラテジスト、エマ・ウー氏によれば、トランプ大統領が大規模な上乗せ関税を発表した2日以降だけでも個人投資家は米国株や上場投資信託(ETF)に300億ドル(約4兆3000億円)以上を投入している。
だが、これが勝ち筋かどうかはまだ分からない。2日以降、米S&P500種株価指数は激しい値動きを伴いながら下落している。
こうした大きなボラティリティーは、個人投資家が実際にどれほど利益を上げているのかを判断しづらくしている。市場参入と市場から撤退するタイミング次第で結果が大きく異なるからだ。

「今は相場が下がっている日に積極的に買っている。20年の時と同じように長期的資産形成のチャンスだと考えている。20年の前半から半ばにかけて、十分に買えなかった」反省があるとスキーマーさんは言う。
長期的に見れば、米国の主要株価指数が上昇してきたのは確かだ。だが、その過程には、株を何年も保有していても元本を回収できなかった期間も存在する。
最近の例では、ドットコム・バブル期がそうだ。2000年の早い時期のピークでS&P500種に買いを入れた投資家は、07年半ばまでリターンを得られなかった。
個人投資家に人気の戦略は「押し目買い」だ。S&P500種が2.4%下落した21日、個人投資家は30億ドル余り株式を買い増した。こうした買いは今年に入り14回目、2日以降では5回目のことだとウー氏は指摘する。

ネーションワイド・ファイナンシャルの投資運用グループ担当シニアバイスプレジデント、ケビン・ジェスティス氏は「投資ポートフォリオを長期的に見る人ほど、今回の押し目買い局面に安心して臨む傾向がある」と語る。
個人投資家と日常的に対話を重ねている同氏によると、「相場の絶対的な底をパーフェクトに捉えようとしなければ、決断はずっとしやすくなる」という。
スキーマーさんはさまざまな業種の株式を購入。グーグルの親会社アルファベットやマイクロソフト、アップル、メタ・プラットフォームズなどテクノロジー大手のほか、製薬大手ファイザーやサーバーメーカーのデル・テクノロジーズなどを配当支払いのある大企業として買い入れている。
これに加え、S&P500種やナスダック100指数に連動する主要なETFにも資金を投じているという。
原題:Retail Traders See Epic Buying Opportunity in S&P’s Wild Swings(抜粋)
--取材協力:Bailey Lipschultz、Matt Turner.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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