パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は今週、経済支援に乗り出す可能性を否定し、トランプ大統領の怒りを買った。こうした中、米株式市場は関税の重しで再び売り優勢となっており、投資家は救いの手を必死に探している。

どれほど切羽詰まっているかは、米国の大型株や小型株、暗号資産(仮想通貨)、社債などあらゆる資産クラスにおいて、さまざまな投資戦略の今年のリターンが急低下している状況を見れば明らかだろう。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)によると、昨年パフォーマンスが好調だった上場投資信託(ETF)上位100本のうち90本が今年に入りマイナスとなっている。関税政策が響いており、運用成績は平均で13%のマイナスだ。

一方、長らく低迷していたトレードが巻き返している。24年にパフォーマンスが最も悪かった株式投信20本のうち9本で今年、リターンがプラスだ。

ここ数十年で最も破壊的とも言える経済政策が米消費者と企業に大混乱をもたらしかねない状況にあって、運用者の痛みが垣間見える。米企業は厳しい業績見通しを示し、合併・買収(M&A)をまとめようとするアニマルスピリッツが後退。現金や金など安全資産に投資家が群がり、それらの代理資産に大量の資金が流入している。

クック・アンド・バイナム・キャピタル・マネジメントの共同創業者リチャード・クック氏は「米国は政治リスクやマクロ経済リスク、地政学リスクがなく、世界における安全な避難先と考えられてきた」とした上で、「現政権の政策変更に伴う不確実性で、その認識が揺らいでいる」と指摘した。

同氏率いるクック・アンド・バイナム・ファンドは、メキシコやチリ、ドイツで事業展開する企業に重点的に投資する運用戦略が奏功し、25年の運用成績は約14%のプラス。昨年は米ポートフォリオとして最下層だったが、今年は上位2%に入っている。BIのデービッド・コーネ氏のデータで分かった。

これは運用が今年好調なファンドでよく見られるケースで、24年の厳しい状況から復活するファンドが目立っている。

人気ハイテク株への投資やデジタル資産取引などで、24年に最大150%のリターンを記録したETFもあるが、これらは25年に急落している。例えば、24年に100%余り上昇したグレースケール・ビットコイン・トラストETF(GBTC)は、今年に入ってから約10%のマイナスとなっている。インベスコS&P500モメンタムETF(SPMO)は昨年45%上昇したが、今年は7%のマイナス。ディファイアンス・クオンタムETF(QTUM)は昨年約50%上昇しながらも今年は10%余りのマイナスだ。

パウエルFRB議長は16日の講演で、米関税引き上げの規模が想定を大きく上回っているとあらためて指摘。インフレとの闘いを続けるとの姿勢を明確にした。トランプ大統領は17日、パウエル議長の「対応が遅すぎる」と批判。FRBは今年これまでに利下げをしておくべきだったし、いずれにせよ今すぐ利下げすべきだと「トゥルース・ソーシャル」への投稿で主張した。

原題:Once-Hot Wall Street Funds Unravel Fast With No Savior in Sight(抜粋)

--取材協力:Isabelle Lee.

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