トランプ政権の関税政策による値上がりを見込み、米国の消費者が自動車や電子機器、家電製品など高額商品の購入を急いでいることが、経済統計によって裏付けられた。

3月の米小売売上高は前月比1.4%増と、2年余りで最大の伸びを記録。自動車販売は5.3%増えた。トランプ大統領は3月下旬、米国に輸入される自動車に対する25%の関税を発表した。

トランプ氏が高関税を課した中国から輸入されることが多い建築資材やスポーツ用品、電子機器などの販売も増加した。

米商務省が公表した小売売上高のデータと、今月決算を発表した大手銀行幹部のコメントからは、関税への懸念が消費者に「買い急ぎ」を促したことがうかがわれる。

消費者信頼感は1950年代までさかのぼるデータで最も低い水準に近いものの、自動車ディーラーや小売り最大手のウォルマートを最近訪れた人にはとてもそうは感じられないだろう。

ウェルズ・ファーゴのエコノミスト、ティム・クインラン、シャノン・グライン両氏はリポートで「消費者は関税と競争している」と指摘。「消費支出は本来なら抑制要因となる負の重力から、またも逃れている」とコメントした。

3月のデータは、トランプ氏が貿易相手国に対する相互関税を発表し一時停止する前、また中国製品の大部分に対する関税を145%に引き上げる前ものだが、将来の価格動向に対する高い不確実性の中での消費者心理を浮き彫りにしている。

カリフォルニア州のフォード販売店に並ぶ新車

購入ラッシュにより、3月の米自動車販売はほぼ4年ぶり高水準に達した。輸入自動車に課される25%関税のコストの多くは、消費者に転嫁される見込みだ。

調査会社アンダーソン・エコノミック・グループが今月出したリポートでは、関税により市場の下位モデルは1台当たり少なくとも2500ドル(約36万円)、高級車は最大2万ドルのコスト増になると推計されている。

インディアナポリス近郊で会計士として働くジェイコブ・タウンゼント氏(32)は今年に入り、電気自動車(EV)の関税や税額控除の変更を予想して新車探しを開始した。

急いでいたわけではないが、リース契約の好条件を見逃さず、3月中旬に2025年型「キア・ニロEV」を購入。同氏は「買い手にとって有利な状況が続くとは思えなかった」とインタビューで述べた。

トランプ氏は9日、先に発表していた高税率の上乗せ関税を90日間停止することを明らかにした。

人工知能(AI)を活用したファッションコーディネートサービス会社ファインドマインの創業者ミシェル・バチャラク氏(39)は、夫と共に住宅リフォームに必要な材料を90日以内に購入し、関税が引き上げられるのに備えてスマートフォンを当初の予定より早く買い替える計画だ。

スマホは現在一部の関税から免除されているが、トランプ氏はこの措置が一時的だと表明している。「アップルが値上げしてからより、今買い替えた方が、ずっと安くなる」とバチャラク氏は話した。

原題:Tariff Jitters Spur Fastest Retail Sales Growth in Two Years (1)(抜粋)

--取材協力:Jaewon Kang、Gabrielle Coppola、Tim Annett.

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